日本・中国・ベトナムなどの干支の動物を比較
干支(えと)といえば、年を代表する12種類の動物がいることが、十二支(じゅうにし)として知られています。
日本の干支は生活に密着していて、生まれ年を動物で表すなど、なじみの深いものです。
干支の発祥は中国で、本来は年に限らず時間を表すものでした。
日本に伝わった時に別の動物に変わったものがあります。
これは日本だけではなく、ベトナムなどの他の国でも同じような変化が見られます。
今回は、干支についての深い話題を凝縮してみました。
今回のタイトル画像でも、ニャラメロさんの愛らしいイラストを利用させていただきました。(以前は下の記事で失礼な利用方法でしたが…)
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年を表す「干支」の中国語
年を表す「干支」は中国語で
十二生肖纪年 [shí èr shēng xiāo jì nián]
といい、略して
生肖纪年 [shēng xiāo jì nián]
とも呼ばれます。さらに略して"生肖"とされる場合もあります。
また
十二属相 [shí èr shǔ xiāng]
という別名でも知られています。
"十二支" [shí èr zhī]という言葉もありますが、これは"十二地支" [shí èr dì zhī]の略称で、古代の時間を表す言葉を意味します。
この記事の前半では、「干支」は年を表す言葉として進めていきます。
後半では、干支の由来について簡潔に説明していきます。
干支の動物
日本の干支の動物
日本の干支は、おなじみのとおり次の順番になります。
- 子(ね)= 鼠(ねずみ)
- 丑(うし)= 牛(うし)
- 寅(とら)= 虎(とら)
- 卯(う)= 兎(うさぎ)
- 辰(たつ)= 龍(たつ)
- 巳(み)= 蛇(へび)
- 午(うま)= 馬(うま)
- 未(ひつじ)= 羊(ひつじ)
- 申(さる)= 猿(さる)
- 酉(とり)= 鶏(とり)
- 戌(いぬ)= 犬(いぬ)
- 亥(い)= 猪(いのしし)
中国の干支の動物
中国の干支の動物は、日本とは異なります。
(中国から日本に渡ってきたものなので、日本に伝わった時に変化した、という方が正しいですが…)
また、中国をはじめとした「旧正月」を祝う文化の国では、この旧暦による新年のお祝いに合わせて、次の動物が登場します。
中国では豚年
比較的有名な話ですが、中国語で"猪" [zhū]と書くと「豚」を意味します。
このため、中国では「猪年」ではなく「豚年」になります。
豚は猪を家畜化したものですが、干支が伝わった頃、日本には豚がいなかったことが理由としてあげられています。
ちなみに中国語で「イノシシ」は、"野猪" [yě zhū]と書きます。
※ "山猪" [shān zhū]とも言い「ユーラシアイノシシ」を指します。「ニホンイノシシ」はの1亜種です。
中国では「羊年」は「ヤギ年」とも
未(ひつじ)年は、中国でも"羊"の字が当てられていますが、これはヤギと羊の両方が含まれています。
正確に区別する場合は、
- ヤギ = 山羊 [shān yáng]
- 羊 = 绵羊 [mián yáng]
とします。
では、中国では「ヤギ年」か?というと必ずしもそうではなく、地域によって「羊年」と捉えられています。
これは中国北方では羊が主流で、南方ではヤギが主流であることから違いがでます。
違いはあっても共通の認識がありますので、例えば北方の有名な料理"羊肉串" [yáng ròu chuàn]は、南方においても羊肉であることが理解されています。
日本語と中国語の干支の比較一覧表
日本と中国の干支の読みと動物を一覧表にしてみました。
十二支 | 日本語 (訓読み) | 中国語 (ピンイン) | 日本の動物 | 中国の動物 |
---|---|---|---|---|
子 | ね | [zi] | 鼠(ねずみ) | 鼠 [shǔ] |
丑 | うし | [chǒu] | 牛(うし) | 牛 [niú] |
寅 | とら | [yín] | 虎(とら) | 虎 [hǔ] |
卯 | う | [mǎo] | 兎(うさぎ) | 兔 [tù] |
辰 | たつ | [chén] | 龍(たつ) | 龙 [lóng] |
巳 | み | [sì] | 蛇(へび) | 蛇 [shé] |
午 | うま | [wǔ] | 馬(うま) | 马 [mǎ] |
未 | ひつじ | [wèi] | 羊(ひつじ) | 羊 [yáng] |
申 | さる | [shēn] | 猿(さる) | 猴 [hóu] |
酉 | とり | [yǒu] | 鶏(とり) | 鸡 [jī] |
戌 | いぬ | [xū] | 犬(いぬ) | 狗 [gǒu] |
亥 | い | [hài] | 猪(いのしし) | 猪 [zhū] |
その他の国の干支
干支の文化を持つ国は、日本と中国に限らず、韓国・モンゴル・ベトナム・フィリピン・タイ・ミャンマー・インドといったアジア諸国から、イランなどの中東諸国、ロシアやベラルーシなど幅広くあるといわれています。
これは13~14世紀のモンゴル帝国の治世による影響で、干支の文化も広がったことが理由とされています。
基本的には本来の中国の干支と同様ですが、他の国でも変化があるようです。
いろいろな情報がありますが、出所のはっきりしている信憑性のある違いは、このような変化があります。
ベトナム
- 丑 = 水牛(すいぎゅう): 牛よりも水牛の方が一般的
- 卯 = 猫(ねこ): 当時うさぎがいなかった、発音が似ていた、などの諸説あり
- 未 = 山羊(やぎ): ヤギ限定
イラン
- 辰 = クジラ: 理由は不明
干支の由来
干支の動物
十二支に動物が割り当てられた背景には、当時の動物崇拝があったと考えられています。
干支の順番に関しても確証のある情報はありませんが、日本でも物語として伝わっています。
おおよその内容は、
- 神様が年の動物の順番を決めるために動物たちを集めた
- 競走の順番で年の順番にした
- ねずみは牛の背中に乗って、直前に飛び降りて1番になった
- 猫もいたが、酒に酔って返事をしたところ、虎に間違われた
など、違いはあってもこのような感じです。
中国にもこのような物語はあって、「神様」ではなく「黄帝」だったり、「猫」ではなく最初から「虎」だったりします。
また「競走」以外にも能力を示す「競争」で、それぞれの理由が述べられているお話もあるなど、いろいろです。
いずれにしても、このお話は後世に作られたものです。
干支が生まれた時期
時期については、正確な年代は不明です。
清代の文学家 趙翼(1727~1814年)の著書「陔余叢考(がいよそうこう)」によると、チベット高原(中国語: 青藏高原)の古代藏族(ぞうぞく = チベット族)に建立された吐蕃王朝で「十二生肖循環紀年法」が制定され、それぞれの暦に動物が割り当てられていたとされています。
この吐蕃王朝は西暦633年~842年にかけて続きました。
中国語: 赵翼 [zhào yì] ,《陔余丛考》 [gāi yú cóng kǎo]
一方、日本への伝来時期について見てみると、日本では「古事記」 (712年)や「日本書紀」 (720年)といった8世紀はじめの歴史書の年代表記は、60年周期の干支が基本になっています。
この60年周期というのは、現代で一般的な十二支に加えて、大元には十支があり、その組み合わせで60年周期として表したものです。
例えば、「丙午(ひのえうま)」は60年に一度、ということを聞かれたことがある方も多いでしょう。
下の表のように、十支と十二支があって、「癸」の次は最初の「甲」に戻りますので、次に同じ十支と十二支の組み合わせに戻るのが60年後、というわけです。
甲・乙・丙の順番は、現代でも馴染みがありますね。
十支 | 甲 | 乙 | 丙 | 丁 | 戊 | 己 | 庚 | 辛 | 壬 | 癸 | ||
十二支 | 子 | 丑 | 寅 | 卯 | 辰 | 巳 | 午 | 未 | 申 | 酉 | 戌 | 亥 |
日本への伝来は百済(現在の韓国)を経由して、という見方が一般的で、「古事記」や「日本書紀」 の完成には40年程の歳月を要したと考えられています。
そう考えると、吐蕃王朝による制定後に日本に伝来した、と考えるのには少し無理があるかもしれません。
実際、この十支と十二支は、本来は時間全体を表すためのものでした。
次のページは「干支の由来」についてです。