中国の「夫婦別姓制度」から考えてみたいこと
「選択式夫婦別姓制度」がいろいろと話題になっていますね。
アジアでは中国と韓国が夫婦別姓になっていて、選択式ではありません。
日本で議論されている夫婦別姓の制度を考えてみる時に、これらの国での夫婦別姓の状況と合わせて考えることは、きっとプラスになるでしょう。
この記事では、中国の例を見ていきたいと思います。
できるだけ簡単に話を進めますが、裏付けとして法律の文言も引用していきます。
中国では2021年1月1日から新しい「民法」にあたる《中华人民共和国民法典》 [zhōng huá rén mín gòng hé guó mín fǎ diǎn]が施行されましたので、適時この《民法典》 [mín fǎ diǎn]を引用していきます。
※ 中国の法律名称は、中国語の表記に習って《 》で表記します。
「小難し過ぎる話はちょっと…」と感じたら、その部分は適当に読み飛ばしてくださいね。
筆者の観点について
とても奥の深い話なので、筆者には「賛成」「反対」の態度はありません。
また、筆者は法律の専門家ではありません。
一般人の視点で、できるだけ客観的に、事実に基づいて見ていきたいと思います。
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日本の夫婦の姓について
選択式夫婦別姓制度とは?
選択式夫婦別姓制度を簡単に言うと
結婚する時、夫婦が二人とも
同じ苗字にして登録するか
旧姓のままで登録するか
を選べる制度、ということです。
選択式夫婦別姓制度をもう少し詳しく
もう少し詳しく知りたい場合、法務省の解説から見てみましょう。
民法等の法律では,「姓」や「名字」のことを「氏(うじ)」と呼んでいることから,法務省では「選択的夫婦別氏(べつうじ)制度」と呼んでいます。
法務省ウェブサイト
選択的夫婦別氏制度
法務省ウェブサイト
夫婦が望む場合には,結婚後も夫婦がそれぞれ結婚前の氏を称することを認める制度」です。
つまり、「現在は,男女が結婚するときは,すべての夫婦は必ず同じ氏(「姓」や「名字」のことを法律上は「氏」と呼んでいます。以下同じ。)を名乗らなければならないことになっています。選択的夫婦別氏制度とは,このような夫婦は同じ氏を名乗るという現在の制度に加えて,希望する夫婦が結婚後にそれぞれの結婚前の氏を名乗ることも認めるというものです。
現行の「夫婦同姓制度」は?
現在の日本では、結婚すると夫婦が二人とも同じ苗字になりますね。
これは、民法の規定によるものです。
夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。
民法第750条
つまり、夫の苗字に統一することが一般的な習慣になっているものの、
夫か妻か、どちらかに統一しなければならないが
夫の苗字でも妻の苗字でも、どちらを名乗ってもよい
ということです。
夫婦同姓制度の経緯 - 日本にも夫婦別姓の時代があった
このような制度になった経緯は法務省のウェブサイトに掲載されていますが、ここでは簡単に抜粋してご紹介します。
- 徳川時代: 一般の人(平民=農民・町民)には苗字の使用は許可されていなかった
- 明治3年: 平民が苗字を使用できるようになった
- 明治8年: 苗字の義務化
- 明治9年: 太政官指令により、夫婦別姓を用いることとされる
この時期には、妻も実家の苗字を使う指令があったものの、夫婦同姓(妻が夫の苗字となる)ことが習慣化していった、と解説されています。
つまり、日本にも明治時代の一時期ですが、夫婦別姓の時代があったことになります。
- 明治31年: 民法(旧法)成立により「家」を同じくすることによって夫婦同姓が採用
- 昭和22年: 改正民法成立により現在の「夫又は妻の氏を称すること」となり、男女平等の理念が取り入れられた
夫婦同姓は、押しつけというよりも当時の国民が選んだということにはなりますが、このころから140年以上の時が流れています。
国際結婚では夫婦別姓が基本
あまり知られていないことですが、日本人と外国人の結婚の場合は、基本的に夫婦別姓となります。
この理由は、外国人には戸籍が作られないためです。
希望によって、姓を変えることもできますので、選択式夫婦別姓、もとい選択式夫婦同姓制度となっています。
これだと、「二重基準」と言われても仕方ないように思えます。
皇族には一般人のような苗字はない
秋篠宮家の長女 眞子さまが2021年11月26日にご結婚されましたが、皇族には一般人のような苗字はありませんので、結婚時には自動的に夫の小室姓を名乗ることになりましたね。
最高裁判所が夫婦同姓を合憲判断
2021年6月23日に最高裁判所大法廷が、夫婦同姓について合憲判断をしました。
これに対して、「個人的権利」という観点から反対という立場の側からも声が上がっています。
姓を変えるのは、日常生活においても仕事上においても、いろいろと煩わしいことが発生するのは事実ですね。
次ページからは、中国での実例を見ていきます。