モウマンタイ(モーマンタイ)・モウマンタイラ(モーマンタイラ)とは?
もしかしたら、「モウマンタイ(モーマンタイ)」の意味は知っていて、中国語だと思って中国人に言ってみたら「え?」という顔をされて分かってもらえなかった。
せっかく親しみを込めて、勇気を出して中国語話したのに… そんな経験はありませんか?
「モウマンタイ(モーマンタイ)」によく似た「モウマンタイラ(モーマンタイラ)」もあるけど「ラ」の意味は?
この言葉について、詳しく解説していきます。
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「モウマンタイ(モーマンタイ)」は死語!?
日本でこの言葉が広まった大きなきっかけは、1999年公開の岡村隆史(ナインティナイン)が主演を務めた香港のアクションコメディ映画です。
2001年には第2弾も制作され、酒井若菜も共演しています。
その後、「デジモン」のキャラクター テリアモンが「モーマンタイ」が口グセという設定があったり、最近では「呪術廻戦」の中で、虎杖のセリフで「無問題(モーマンタイ)」が出てきたり、ファンの間では馴染みのある言葉かもしれません。
それでも、一般的に流行したこの映画から20年以上の歳月が流れているので、流行語としての「モウマンタイ(モーマンタイ)」は、残念ながら死語認定で間違いないでしょう。
「モウマンタイ(モーマンタイ)」の意味は?
「モウマンタイ(モーマンタイ)」は日本語にあてると
無問題
「モウマンタイ(モーマンタイ)」は日本語の漢字にあてるとしたら「無問題」になり、英語でいうところの"No problem"となります。
つまり、
問題ない = 大丈夫 = OK
を意味します。
状況によっては、この「問題」は「質問」の意味になりますので、「質問はない」という意味にもなります。
ですが、この言葉は標準的な中国語ではないのです。
「モウマンタイ(モーマンタイ)」は広東語!
カタカナで書く「モウマンタイ(モーマンタイ)」は、標準語としての中国語「普通話」[プー トン ファ]ではなく、広東語(かんとんご)になり、広東語圏では一般的に使われる言葉ですので、死語ではありません。
※ 「普通話」を中国語では"普通话" [pǔ tōng huà]と呼びます。
広東語は中国南部の広州(こうしゅう)地方を中心に、香港・マカオのほか、マレーシアやシンガポールなどで用いられている言語のひとつで、もともとは広州方言が基になっています。
ただ、「方言」といっても日本の方言とは異なり、標準語の「普通話」と比べると外国語レベルに異なります。
このため、広州地方以外の出身の人でしたら理解できない可能性が高い、というのが大きな理由のひとつめです。
北京出身の中国人は「北京語」と呼ばれる中国語を話します。「普通話」はこの「北京語」が基になって制定されていますので、逆にいうと北京の人にとっては、若干の相違はあるものの自身の方言と標準語の差は大きくありません。
※ 「北京語」を中国語では"北京话" [běi jīng huà]と呼びます。
ただ、それ以外に地域にも方言があり、大きく分類するだけで7つになると言われています。中国人は自身の方言に加えて、学校などで「普通話」で学習しますので、既にバイリンガルといっても過言ではありません。
ちなみに広東語は中国語で、"粤语" [yuè yǔ]といいます。
※ カタカナ表記では[ユエ ユー]に近くなります。
「モウマンタイ(モーマンタイ)」の発音【音声】
「モウマンタイ(モーマンタイ)」は広東語で、特有の漢字表記となります。
この漢字の説明の前に、音声を確認してみてください。
「モウマンタイ(モーマンタイ)」は広東語特有の漢字表記
冇问题
「モウ」の漢字
「モウマンタイ(モーマンタイ)」の「モウ」は、"冇"という字を使います。
この字は日本語にはないため、冒頭では「無」の字をあてました。
この"冇"という字は形から想像つくかもしれませんが、"有"の反対の意味を持つもので、中国各地の方言の中で多く用いられています。
標準的な中国語である「普通話」は通常この漢字は用いず、"没有" [méi yǒu]が使われます。
※ カタカナ表記では[メイヨウ]に近くなります。
「マンタイ」の漢字
また、「マンタイ」は"问题"という字になりますが、これは中国本土で使用される字体「簡体字(かんたいじ)」で、香港などで使用される「繁体字(はんたいじ)」で表記すると、日本語と同じ"問題"となります。
このことから「モウマンタイ(モーマンタイ)」は、広東語で"冇问题"と表記されますが、「普通話」では"没有问题" [méi yǒu wèn tí]が同義となります。
「モウマンタイラ(モーマンタイラ)」の「ラ」の意味は?
「モウマンタイ(モーマンタイ)」は、話し言葉の中で「モウマンタイラ(モーマンタイラ)」と「ラ」がつく場合もありますが、意味が変わることはありません。
「モウマンタイラー(モーマンタイラー)」と伸ばす場合も同じです。
この「ラ」は、
日本語にすると「~だよ」のような語尾
で、中国の南方の人たちは日常会話でよく使います。
例えば、「OK」に「ラ」をつけて、「オーケーラ」とか「オーケーラー」という感じです。
この「ラ」の漢字は、"啦" [la]が使われます。
冇问题啦! [モウマンタイラ]
冇问题啦~ [モウマンタイラー]
「モウマンタイ」への返事・返し方
「モウマンタイ」は使う場面によって意味が変わりますので、返し方も変わってきますね。
おそらく、いちばん多いのは、何かを頼んだ時でしょう。
となるとお礼が返事として適切です。
広東語では、一般的に何かをしてもらった時や物をもらった時のお礼は
多謝 [ドーツェー]
といいます。
何かをしてもらった時に、軽い感じで使えるお礼は
唔該 [ンッゴイ]
ということもできます。
または、軽い返しで「OK」のような場合は、ほぼそのまま
OK啦 [オーケーラー]
といえます。最後に「ラー」をつけるのは、よくある表現です。
同じ意味で
好呀 [ホウア]
ということもできます。
さらに、「すばらしい!」と褒める場合は、
好犀利! [ホウサイレイ]
ということもできます。これは「普通話」の"好厉害" [hǎo lì hài]に相当する言葉のひとつです。
いずれの場合も、「普通話」とは違った発音です。
「モウマンタイ」の反対語・疑問形
「モウマンタイ」の直訳が「問題はない」「質問はない」になりますので、反対語は
有問題 [ヤウマンタイ]
になります。
また、疑問形にする場合は
有冇問題? [ヤウモウマンタイ]
のように、「普通話」と同様の文法が使えます。
以下は広東語についてのもう少し深い解説です。
広東語の発音難易度は標準中国語を超える!
「モウマンタイ(モーマンタイ)」と言ったのは、広州地方の人にだったけど…
もしかしたら、そんな思いもあるかもしれません。
広東語の発音記号
中国語では、発音の一部としての抑揚が重要です。一般的に「声調(せいちょう)」と呼ばれています。
「普通話」では「四声(しせい)」と呼ばれる4つの発音が基本で、それに「軽声(けいせい)」と呼ばれる軽い音が加わります。
それに対して、広東語の声調は6つの発音が基本で、それに詰まる音が3つ加わります。
この基本の6つは3種類の一定の音の高さと、3種類の抑揚のある音に分類できます。
これを"九声六调" といい、中国語の発音記号であるピンインとは異なり、発音を表すアルファベットに1~6の番号を追加します。
これにより、"冇问题"の発音は
[mou5 man6 tai4]と表記されます。
これまで出てきた広東語の発音記号は、このようになります。
- 冇问题 [mou5 man6 tai4]
- 多謝 [do1 ze6]
- 唔該 [m4 goi1]
- OK啦 [OK laa1]
- 好呀 [hou2 aa1]
- 好犀利 [hou2 sai1 lei6]
- 有問題 [jau5 man6 tai4]
- 有冇問題? [jau5 mou5 man6 tai4]
広州地方に通じなかったとすれば、この発音が大きな理由と考えられます。
広東語の声調表
この声調については、下の表にまとめました。
※ 表中の「漢字の例 簡 (繁)」は、「簡体字」と「繁体字」が異なる場合、カッコ内に「繁体字」を表記しています。
※ 表中の"发 (發)"については、"faat3"の他に"fat3"の発音となる場合があります。
参考までに、例の漢字と声調名の標準語読みのピンイン(拼音)表記を書いておきます。
分 [fēn]・粉 [fěn]・训 [xùn]・焚 [fén]・愤 [fèn]・份 [fèn]・忽 [hū]・发 [fā]・佛 [fú]
粤语 九声六调 [jiǔ shēng liù diào]
阴平 [yīn píng]・阴上 [yīn shàng]・阴去 [yīn qù]・阳平 [yáng píng]・阳上 [yáng shàng]・阳去 [yáng qù]・阴入 [yīn rù]・中入 [zhōng rù]・阳入 [yáng rù]
※ "阴"と"阳"は「簡体字」で、「繁体字」または日本の漢字で表記すると「陰」と「陽」になります。
この言葉を言うタイミングや場の空気から、この声調までを完璧にしないと伝わらない、というわけでもないと思います。
「モウマンタイ(モーマンタイ)」について、かなり詳しく見てきました。
今回もお読みくださり、ありがとうございました。
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