いろいろな同形反復の漢字(一文字の漢字)
知っている中にも、多くの同じ漢字を2つや3つ組み合わせた漢字があります。
「木」を2つ並べた「林」や3つ並べた「森」は、誰でも知っている漢字ですね。
3つ並べたものは、「口」を3つ並べた「品」に見られることから、「品字様(ひんじよう)」と呼ばれます。
このような、同じ漢字を組み合わせた漢字、同形反復の漢字は「理義字(りぎじ)」と呼ばれる場合もあるようですが、実際には不正確とのことです。(詳しくはWikipediaの記事をご覧ください)
中国語には、"叠字" [dié zì]という名称があります。
"叠字"には、その数によって"二叠字"や"三叠字"などと呼ばれます。
普段目にする「同形反復の漢字」だけでなく、珍しい漢字や古字となって現代では使われない漢字があります。
逆に、珍しいながらも面白いので、中国のSNSなどで人気となっていることもあります。
※ 「同形反復の漢字」では長いので、以下は中国語にならって"叠字"と表記していきます。
ここでは、中国のSNSなどで人気の"叠字"を中心にご紹介していきます。
日本語とは意味が違う場合もありますが、漢字文化ならではの面白い使い方がありそうです。
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燚 - 「火」が4つ!人気の叠字の代表格
燚
Unicode: U+71DA
「火」や「炎」は見慣れた漢字ですが、3つや4つの漢字もあります。
これは火が燃える様子を表すもので、4つの"燚"が最多です。
中国では、人名にも使われます。
なぜこの字が人気かというと、中国語では「火」は「人気があること」を意味します。(英語でいえば"Hot"の感覚です。)
この「火」が最多であれば、「最も人気」を表すことができますね!
でも、日本語だと感覚がちょっと違います。
ネット上で「火」が2つなら「炎上」を連想してしまいそうです。
ならいっそのこと、最高度合いの「炎上」を「燚上」としてしまうのもアリかもしれませんね。
日本語の読み
【音】イツ
中国語の読み
[yì]
ちなみに、「火」が3つの漢字もあって、日本語では音読みで「エン」、訓読みで「ほのお」と、「炎」と同じです。
中国語では、それぞれ違う発音になります。
- 火 [huǒ]
- 炎 [yán]
- 焱 [yàn]
- 燚 [yì]
尛 - 「小」が3つで最小を表す!?
尛
Unicode: U+5C1B
漢字から想像できるとおり、「とても小さい」ことを表す漢字です。
ネット上の愛称としても"尛尛"は人気です。
この字は"麽" [mó]の古字で、"麼" [mó][me]とも書かれます。
現代の中国語では"么" [me]となります。
日本語の読み
【音】バ、マ、モ
中国語の読み
[mó]
槑 - 呆を2つ並べた漢字の意味は?
槑
Unicode: U+69D1
この漢字は「梅」の古字(異体字)で、他意はありません。
でも、中国のネット上では可愛い感じの表現で「無邪気なアホ」の意味で使われることがあります。
これは日本語の意味からも想像がつくとおり、「阿保(あほう・あほ)」や「呆(ほう)ける」の「呆」が並んでいるためです。
日本語の読み
【音】バイ
【訓】うめ
中国語の読み
[méi]
孖 - 意味は見た目どおりの「双子」
孖
Unicode: U+5B56
「子」が2つ並んだ、この漢字は見た目どおりに「双子」を意味します。
日本語の読み
【音】シ、ジ
中国語の読み
[má]
では、「三つ子」を表す漢字もありそう…となりますが、「子」が3つの漢字はあっても、意味が違ってしまいます。
孨
Unicode: U+5B68
日本語の読み
【音】1)セン 2)ジュウ、ニュウ
中国語の読み
[zhuǎn]
日本語での意味は、
1 弱い
2 集まるさま
とのことで、中国語では
哀れさをさらけ出す
という意味で、ネット上でも見かけることは、ほとんどありません。
艸 - 日本では「手」の絵文字で使われる漢字の正体は「草」
艸
Unicode: U+8278
日本のネット上では顔文字とあわせて「手」として使われるこの漢字は、「草」の古字(異体字)です。
(*^O^*)艸
日本のネット上では、「草」という漢字は(笑)→w→wwwと変遷して、草が生い茂る様子にみえることから(笑)と同じように使われます。
中国ではこのような意味はなく、"艸"の発音が[cǎo]("草"と同じ)であることから、ネット上では罵りの言葉として知られています。
日本語の読み
【音】ソウ
【訓】くさ
中国語の読み
[cǎo]
「艸」は"二叠字"ですが、"三叠字"や"四叠字"もあります。
「屮」もあって、それぞれの漢字の読みと意味は、次のとおりです。
屮
Unicode: U+5C6E
日本語の読みと意味
【音】サ
【訓】ひだり
意味: ひだり、左手。
芔
Unicode: U+8294
日本語の読みと意味
【音】キ
【訓】くさ
意味: 草(くさ)。草の総称。盛(さか)ん。
茻
Unicode: U+833B
日本語の読みと意味
【音】ボウ
意味: 草が多いさま。草がむらがり生えるさま。
それぞれの中国語読みは次のとおりで、意味は異なりますが割愛します。
(気になる方はこちらのツールから調べてみてください)
- 中国語の読み
- 屮 [chè] [cǎo]*
- 艸 [cǎo]*
- 芔 [huì]* [hū]
- 茻 [mǎng]*
*印は"草"を意味する場合の読み
㐂 - ラッキーセブンの漢字!?
㐂
Unicode: U+3402
七が3つにみえる漢字の意味は「喜」と同じで、「よろこぶ」や「楽しい」などの意味があります。
この字は「『喜』を草書体を楷書化した漢字で、数字の『七』とは関係ない」というのが通説ですが、明確な起源は不明です。
いずれにしても、おめでたそうな漢字ですね!
日本語の読み
【音】キ
【訓】よろこ(ぶ)
中国語の読み
[xǐ]
鑫 - ゴールドラッシュな漢字!?
鑫
Unicode: U+946B
特にひねりはなく、「金が多い」ことで「金銭や財産などが多いさま」を表します。
中国では、店の屋号や人名に使われることが多い漢字です。
それなら、「『金』の"四叠字"ないか?」と思ってしまいますが、一般的にはありません。
一部には「ある」という意見で、[bǎo]という発音(「宝」と同じ)の例もありますが、出所は不明で信憑性はありません。
古字まで含めて「無い」と断言するのは無理ですが、少なくとも一般的なフォントには、この"四叠字"は収録されていません。
日本語の読み
【音】キン、クン
【訓】よろこ(ぶ)
中国語の読み
[xīn]
靐 - 雷が3つで「鳴り響く音」
靐
Unicode: U+9750
画数は39画と無駄に多い気がしますが、古くから雷は恐怖の対象だったのでしょう。
裏付けのある古字の中では、雷を表す漢字が最も画数の多い漢字と認識されています。
日本語の読み
【音】ヒョウ、ビョウ
中国語の読み
[bìng]
「雷」の異体字で「畾」という漢字もあります。
畾
Unicode U+757E
「雷」の意味以外にも、「藤で作られた入れ物」や「軍事用の防御壁」の異体字でもあります。
日本語の読み
【音】ライ、ルイ
中国語の読み
[léi]
雷については、画数がやたらに多い古字もありますので、よかったらこちらの記事もご覧ください。
このようなネットで使えそうな、おもしろい"叠字"(同形反復の漢字)は他にも たくさんあります。こちらもどうぞ!
今回もお読みくださり、ありがとうございました。
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