英語で「より良い」「マシ」の区別はできる?
日本語は表現豊かな言語のひとつです。
比べて「良い」を表現する時に、積極的な比較では
より良い
もっといいね
などの表現がありますが、消極的な場合は
マシ
という言い方もします。
英語では「より良い」と「マシ」の区別はできるか? - 結論から
英語では「より良い」と「マシ」の区別はできるか?
という内容が今回のテーマですが、結論から言うと
- 英語には明確に区別した言葉はないが区別は可能
- 「マシ」は"better"や"(still) acceptable"が近い表現
- 明確な区別がないため、場合によっては使い方に注意が必要
となります。
中国語での表現についても、少し触れてみます。
本題に入る前に、日本語の「マシ」という言葉を少し確認してみましょう。
マシの意味・語源
日本語の「マシ」は漢字で書く頻度は少なくなってきているようですが、漢字では「増し」になります。
小学館のデジタル大辞泉によると「増し(まし) の意味」は
増し(まし) の意味
[形動][文][ナリ]どちらかといえば他よりすぐれているさま。まさっているさま。
「もう少し―な案はないか」「これでもないより―だ」
デジタル大辞泉(小学館)
ということで、「比較の上で良い方」の意味になり、例文を見ても積極的な意味は持っていないことが分かります。
英語の比較級
「比較の上で」ということになると、英語では「比較級」が思い浮かびます。
ここでは多くは書きませんが、形容詞に"~er"をつけたり、長い単語では最初に"more"をつけるものです。
「最上級」では"~est"や"most"になりますね。
(最上級は特定の最高レベルを指すため、"the"をつけます。)
例えば、
high - higher - the highest
important - more important - the most important
のようになりますが、
単語が変わってしまう例もありますね。
good - better - the best
※ "more better"なんて言い方はありえません。
前置きが長くなりましたが、本題に入ります。
英語では「より良い」と「マシ」の区別はできるか?
「マシ」の意味を考えると、"good"の比較級である"better"が最も近いものになりますが、「より良い」との違いははっきりしません。
英語辞典の"Oxford Learner's Dictionary"の定義を見ても
better
a higher standard or less poor quality; not as bad as something else
Oxford Learner's Dictionary
と、確かに消極的な比較の意味が含まれます。
対面での会話であれば、思いっきりの笑みを浮かべて"better"と言えば「より良い」という感情が伝わりますし、よく考えた上で「この方が良い」と言う場合は、納得感を出す反応を前面に出せます。
でも、メールやチャットなどの文面の場合、特にビジネスでのメールには顔文字をつけることもできません。
では、どのように表現したらよいでしょうか?
"better"は、文脈によっては消極的に取られる可能性があるため、
betterは通常使わない
というのが最良の解決策だと思います。
本当に「マシ」と思う時だけ使うようにすることで、その際も補足的な説明を合わせた方がよいでしょう。
例えば
何も無いよりはマシ
= It is better than nothing.
何もやらないよりはマシ
= It is better than not doing anything.
= It is better than taking no action.
のように表現すると、単に「マシ」になりかねない"It is better"が他に使われている場合でも、消極的になる可能性は低くなります。
きれいな言葉ではないですが、こんな表現にも使えます。
(俺は)お前よりはマシ
(私は)あんたよりマシ
= I am better than you.
ただ、"better"を使う以外に、もっと良い方法があります。
英語には褒め称える表現が日本語以上にありますので、普段はこれを多用します。
普段や文面の他の個所で「より良い」方を明確にする方法です。
筆者がよく使う単語は"nice"の比較級です。
It is nicer.
この表現は、積極的な「より良い」にとってもらえる表現です。
このようなわけで、状況によってはこのような訳の違いにもなり得ます。
It is much better.
= その方がずっとマシだね。
It is much nicer.
= その方がもっといいね。
英語圏であっても控えめな表現をする謙遜なネイティブもいるので、その人が自身のことで"It is better."と言った時には、筆者は必ず"It is nicer."と言い換えて同意します。
「マシ」を意味する別の表現
また、「マシ」を表現する上で、"acceptable"という単語を使うこともできます。
「受け入れる」「応じる」などの意味をもつ"accept"に、「~できる」という意味の"~able"をあわせた単語です。
日本語にすると「受け入れられる」という意味で、すごく積極的ではないものの「受け入れることができる」表現となります。
それならいい(良い)です
= It is acceptable to me.
また、「まだ」「それでも」と言った意味を持つ"still"とあわせて
それならまだいい(良い)です
= It is still acceptable to me.
という表現も、状況によっては適切です。
もし、喜んでそれが良いと思う場合は、
I am happy with it.
という表現もできます。
"happy"という単語は、ビジネスでも普通に使います。
○○する方がマシ
今回の主題とは少しそれますが、「○○する方がマシ」なんていう時は、"better"を使うよりも"I'd rather than (I would rather than)"の方が適切な表現です。
日本語にすると「むしろ○○したい」という感じです。
これは選択肢の中から選び取るもので、選択肢によって良い表現(丁寧な表現)にも悪い表現にもなり得ます。
今日は(フランス料理よりも)和食を食べたいです。
= I’d rather have Japanese food (than French) today.
(恥をかくなら、)死んだほうがマシ
= I'd rather die (than be shamed).
のような表現になります。
※ 他にも"I prefer ~"(○○の方を好む)などの表現もできます。
中国語で「マシ」を表現するには
中国語も表現が豊富な言語ですが、日本語の「マシ」に直接相当する言葉はありません。
中国語では比較の時、漠然とした比較をする時に使う"比较" [bǐ jiào]や、特定の物や内容と比較する"比" [bǐ]があります。
这个比较好
= この方が良い
这个比较好多了
= この方がずっと良い
这个比那个好
= これの方がそれより良い
この"比(较)好"は、英語の"better"に近い感じになりますので、積極的にも消極的にもなり得ます。
これ以外に、「まあまあ」という意味で使われる
还可以 [hái kě yǐ]
は、状況によって「まだいい」という意味にもなります。
つまり、上の訳は「マシ」にも捉えることができるものです。
そのような訳で、
这个更好
= これはもっと良い
という表現で、日本語でいう「比較的」のような消極的表現を避けることで、「良いものは良い」と明確にする点では、英語と感覚が似ている部分もあります。
ちなみに"这个比较更好"や"这个比那个更好"のような表現はできません。
中国語の称賛の言葉は他にもたくさんあるのですが、今回はここまでで終わることにします。
今回もお読みくださり、ありがとうございました。
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