英語で「もったいない」を表現
日本語は表現豊かな言葉ですが、ひとつの言葉を日本語を英語に翻訳する時、いろいろな意味があって状況によって異なる場合もしばしばです。
日本語の単語を英訳する、というよりも、意味を考えて英語で言い換える方が適切な場合が数多くあります。
「もったいない」という言葉も、そのひとつではないでしょうか?
今回は、「もったいない」の英語表現をみていきましょう。
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最適解: 「もったいない」は英語で”too valuable”
日本語の「もったいない」を直接表現できる単語は、英語にはありません。
このため、「これが正解!」ということはできないのですが、
「もったいない」は英語で"too valuable"
という表現が、多くの場合で最も簡潔、かつ適切になると筆者は考えます。
直訳すると「(主に物や事柄についての)価値があり過ぎる」という意味になってしまいますが、使う状況や「~(する)には、もったいない」という文にする時にも、使いやすい表現といえるでしょう。
その理由について、見ていきましょう。
「もったいない」は英語で”Mottainai”?
2004年のノーベル平和賞者のケニア人女性 ワンガリ・マータイさん (故人 / Ms. Wangari Maathai)が、日本の「もったいない」という文化に感銘を受けて「MOTTAINAI」キャンペーンを展開しながら、世界に「もったいない」という言葉を広めていただきました。その意志は現在も引き継がれています。
この活動は非常に意義のあるもので、日本語の「もったいない」の認知度向上においても大きな貢献であったことは紛れもない事実ですが、現時点では辞書に掲載されるほどには至っておらず、普及したとは言い難いのも また事実です。
このため、英語として"Mottainai"は通じないと考えておいた方が無難です。
日本語の「もったいない」の意味は?
英語での「もったいない」という表現を考えるために、まずは日本語でもその意味をおさらいしておきましょう。
もったい‐な・い【×勿体無い】
デジタル大辞泉(小学館)
- 有用なのにそのままにしておいたり、むだにしてしまったりするのが惜しい。「捨てるのは―・い」「使わないでおくには―・い人物」
- 身に過ぎておそれ多い。かたじけない。「―・いおほめのお言葉」
- 不都合である。ふとどきである。もってのほかである。
日本人は「もったいない」がこのような意味であることを、感覚的に持っていると思います。
では、この「もったい」とは何でしょうか?
引き続き辞書を見てみると…
もっ‐たい【×勿体/物体】
デジタル大辞泉(小学館)
- 外見や態度の重々しさ。
- 態度や風格。また、物の品位。
この「もったい」と「ない」のつながりが少しわかりづらいかもしれませんが、内閣府大臣官房政府広報室ウェブサイトの記事で、MOTTAINAIキャンペーン事務局長 七井辰男さんの解説を見ると納得できます。
「『もったいない』という言葉は、威厳や重々しさを意味する仏教用語の『勿体/物体』に、否定の言葉を意味する『ない』が合わさったものです」とMOTTAINAIキャンペーン事務局長の七井辰男さんは言う。「それ故、『勿体ない』とは『その物の本来あるべき姿が失われている』という意味であり、例えば、食事の際にご飯粒を残すことを『もったいない』と言うのは、ご飯粒の本来持つ価値を無意味なものにしているという意味なのです」。 七井さんはこの言葉が約800年前から使われており、その起源や解釈については諸説あることを指摘する。
MOTTAINAIキャンペーン事務局長 七井辰男さん(文章内の強調表示は筆者による)
英語で「もったいない」を表現する例
英語で「もったいない」という場合、状況にあわせて それぞれの意味を英語に置き換えると、こんな表現ができます。
むだにしてしまったりするのが惜しい
It is a waste of time.
It is a waste of money.
直訳すると、「それは時間(またはお金)の無駄だ」になりますが、例えば食べ物を腐らせてしまったり、せっかくの労力が実にならなかったりした時には意味が合いますね。
もちろん"time and money"の両方を入れることもできます。
冒頭でご紹介した"too valuable"を使うと、こんな表現ができます。
It is too valuable to waste!
捨ててしまうには価値がありすぎる
身に過ぎておそれ多い
「もったいない」が「良すぎる」という意味を持つ場合
The gift is too great for me. ("to me"も可)
この贈り物は(素晴らしすぎて)私にはもったいない
She is too good for him.
彼女は(良すぎて)、彼にはもったいない
という表現もできます。
同様に、"too valuable"を使うと、こんな表現ができます。
The gift is too valuable for me.
この贈り物は、私に対しては価値がありすぎます
2番目の例については、"too valuable"でも間違いではありませんが、"valuable"は主に物や事柄についての価値になりますので、人に対しては"too good"の方が適切になります。
人や行動に対しては"too worthy"を使うこともできるでしょう。
意味が転じて人についても使う という点は、日本語の場合も同様ですね。
もってのほかである
このような用法は、「おそれ多い」や「恐縮する」に近い意味になりますね。
I am truly humbled to get this prize.
この賞をいただくのは、本当に恐縮です。
"too valuable"は、この場合でも応用できます。
Receiving this prize is too valuable for me.
この賞をいただくのは、私にとってあまりにも貴重です。
このように、「もったいない」を英語で表現するには、状況に合わせて近い表現を選択するのが最善ですが、冒頭に書いた結論のように、"too valuable"は「もったいない」を表現するのに応用しやすい最適解といえるでしょう。
今回もお読みくださり、ありがとうございました。
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