「ちんぷんかんぷんの語源は中国語」説を掘り下げてみた
「さっぱりわけのわからない」といった意味の「ちんぷんかんぷん」
これが中国語が語源という説があります。
「これが本当かどうかは結論が出せない」というのが結論ではありますが、意外におもしろいので掘り下げてみました。
最後に中国語で「ちんぷんかんぷん」を表現する言葉も掲載しています。
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「ちんぷんかんぷん」とは?
辞書を見ると「ちんぷんかんぷん」は「ちんぷんかん」と同じとされています。
「ちんぷんかん」には「珍紛漢」などの漢字が当てられていますが、これは当て字です。
ちん‐ぷん‐かん【珍紛漢/珍×糞漢/陳奮×翰】
読み方:ちんぷんかん[名・形動]《「ちんぶんかん」とも》言葉や話がまったく通じず、何が何だか、さっぱりわけのわからないこと。また、そのさま。ちんぷんかんぷん。「難しくてまるで—な講義」
[補説] 漢字はすべて当て字。もと儒者の用いた漢語をひやかした語とも、外国人の言葉の口まねからともいう。
デジタル大辞泉
「ちんぷんかんぷん」の語源といわれる中国語
「ちんぷんかんぷん」の語源となる中国語は
听不懂,看不懂
というのが、この説でよくあげられている例です。
听不懂 [tīng bù dǒng] [ティン ブゥ ドン] = 聞いて理解できない
看不懂 [kàn bù dǒng] [カン ブゥ ドン] = 見て理解できない
「聞いてもわからない」「見てもわからない」という、まさしく「ちんぷんかんぷん」を表す中国語と同じです。
ここで掲載した中国語の発音は、現代の中国語の標準的な発音(普通話)ですから、この言葉誕生したといわれる江戸時代(西暦1700年代後期)と同じかどうかは確証を得ることができません。
「ちんぷんかんぷんの語源が中国語」という説を否定する説明では、この言葉が誕生したのは江戸時代、当時の中国人の在住は主に長崎で、教育を受けていない庶民によって広まったから、といった論調が目立ちます。(おそらく他の記事をコピーして拡散)
でも、これを理由としてしまうのは、いささか浅はかに感じます。
平賀源内の著書に登場する「ちんぷんかん」
江戸時代の天才・奇才 平賀源内
というのは、日本の江戸時代の天才であり奇才である、平賀源内(ひらが げんない)の存在です。
平賀源内といえば「エレキテル」の発明家としても知られていますが、実に多くの才能を持った人物で、以下のように説明されています。 (Wikipedia)
- 本草学者(中国および東アジアで発達した医薬に関する学問の学者)
- 地質学者
- 蘭学者
- 医者
- 殖産事業家
- 戯作者
- 浄瑠璃作者
- 俳人
- 蘭画家
- 発明家
平賀源内は「儒教(じゅきょう)」(孔子を始祖とする思想)や「漢学」(中国伝来の漢籍・中国思想・漢詩文の研究)も行っていて、当時の中国の文化にも造詣が深いことがうかがえます。
この平賀源内の著書「風流志道軒伝(ふうりゅうしどうけんでん)」に、「ちんぷんかん」の記載があるのは興味深いところです。
平賀源内の「風流志道軒伝」
平賀源内は、宝暦13年(1763年)にペンネーム「風来山人」として「風流志道軒伝」を発表し、ベストセラーになりました。
この書物の一部を抜粋します。(太字化は筆者による)
井戸で育そだつた蛙かいる学者がめつたに唐贔屓ひいきに成りて、我生うまれた日本を東夷とうゐと称し、天照太神は呉ごの太伯たいはくに違ちがひないと附会ふくわいの説せつをいひちらし、文武の道を表にかざり、ちんぷんかんの屁をひつても知行の米を周しやうの枡ますではかり切で渡されなば、其時却つて聖人を恨うらむべし。
風流志道軒伝 巻之五 材木座書房より
この部分では、「唐(中国)かぶれになった井戸の中の蛙のような学者」に対して「ちんぷんかんな屁理屈をこねて」とを皮肉っています。
確認できる写本を見る限り「ちんぷんかん」と ひらがなで書かれていて、「ちんぷんかんぷん」ではなく「ちんぷんかん」と描写されています。
これが「ちんぷんかん」の起源が江戸時代といえる根拠となっています。
「『ちんぷんかん』なら"听不懂,看不懂"とは違うよね?」という意見も聞こえそうですね。
確かにそうかもしれません。
でも、「エレキテル」は「オランダ語(ラテン語)の"elektriciteit" (電気、電流)がなまったもの。静電気の発生装置。源内は『ゐれきせゑりていと』と表記している。」(Wikipedia)ことも確認されています。
「ちんぷんかん」が平賀源内の造語かどうかは分かりませんが、漢語も理解している江戸時代のエンターテイナー、インフルエンサーである平賀源内が、"听不懂,看不懂"(または近い当時の漢語)から作った言葉が「ちんぷんかん」で、ここから「ちんぷんかんぷん」となったとしても不思議ではないと思います。
いずれにしても、江戸時代の天才・奇才の話ですので真相は闇に包まれたままですが、とても興味深い背景がありますね。
中国語で「ちんぷんかんぷん」という表現は?
さて最後に、現代の中国語で「ちんぷんかんぷん」の表現を、例文とあわせて見てみましょう。
はじめはやはり"听不懂,看不懂"から。
听不懂,看不懂 [tīng bù dǒng][kàn bù dǒng]
例文:
- 他讲的是四川方言,我一点都听不懂。
[tā jiǎng de shì sì chuān fāng yán][wǒ yī diǎn dōu tīng bù dǒng]
彼は四川方言を話すから、私にはさっぱり分からない。
- 这张图表太复杂了,没有说明,我看不懂它到底表示什么。
[zhè zhāng tú biǎo tài fù zá le][méi yǒu shuō míng][wǒ kàn bù dǒng tā dào dǐ biǎo shì shén me]
この図表は複雑すぎて説明もないから、一体何を表しているのか見当がつかない。
一头雾水 [yì tóu wù shuǐ]
話の内容がさっぱり理解できない様子
例文:
- 他讲的东西我完全听不懂,简直是一头雾水。
[tā jiǎng de dōng xī wǒ wán quán tīng bù dǒng][jiǎn zhí shì yī tóu wù shuǐ]
彼の話すことは私には全く理解できず、まったくちんぷんかんぷんだ。
莫名其妙 [mò míng qí miào]
「わけが分からない」「意味不明」といった様子
例文:
- 他突然对我发火,完全莫名其妙,我根本不知道自己做错了什么。
[tā tū rán duì wǒ fā huǒ][wán quán mò míng qí miào][wǒ gēn běn bù zhī dào zì jǐ zuò cuò le shén me]
彼は突然私に対して怒り出した。まったくもって意味が分からない。自分が何を間違ったのか全然わからない。
不知所云 [bù zhī suǒ yún]
特に文章や話の内容が「何を言っているのか分からない」という意味
例文:
- 这篇论文结构混乱,术语堆砌,让人读了不知所云。
[zhè piān lùn wén jié gòu hùn luàn][shù yǔ duī qì][ràng rén dú le bù zhī suǒ yún]
この論文は構成がめちゃくちゃな上、専門用語を羅列していて、読んでもちんぷんかんぷんだ。
鸡同鸭讲 [jī tóng yā jiǎng]
鶏とアヒルが話しているように言語や文化が違いすぎてまったくかみ合わない会話を表す
例文:
- 跟他沟通就像鸡同鸭讲,根本没法交流。
[gēn tā gōu tōng jiù xiàng jī tóng yā jiǎng][gēn běn méi fǎ jiāo liú]
彼とコミュニケーションを取るのはまるで鶏とアヒルが話しているようで、まったく意思疎通ができない。
いかがでしょうか?
できれば「ちんぷんかんぷん」な状況は避けたいところですが、長い歴史の中の「ちんぷんかんぷん」は逆にロマンさえ感じさせる おもしろさがあると筆者は思っています。






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