烏龍茶(ウーロン茶)のいろいろ
中国のお茶と聞いて、多くの方が思い浮かべるのは「烏龍茶(ウーロン茶)」ではないでしょうか?
油っこい食事にもよく合う健康茶・美容茶として、スーパーやコンビニ、飲食店や居酒屋などで日常的に愛飲されています。
- なぜ烏龍茶なのでしょうか?
- 烏龍茶の名前の由来は?
- 烏龍茶の有名な品種
を中心に、ご紹介していきます。
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烏龍茶 - 日本での商品化
日本で商品化して広めたのは伊藤園で、1979年に缶入りの烏龍茶を発売して人気を集めたといわれています。
この頃は、茶葉を使ってお茶を入れるという手間や食の変化から、茶葉の販売が落ちていったことが背景にあります。
当時は、缶入りの飲み物といえば清涼飲料水が一般的で、自動販売機で買えるのは「缶ジュース」と呼ばれている甘い飲み物ばかりでしたが、無糖のお茶という異色の商品で市場に参入することになりました。
※ 注: 本来の「ジュース」は「清涼飲料水」ではありません。
その後、1981年にサントリーからも「サントリー烏龍茶」として大々的に広められ、テレビCMなどでも「福建省の高級茶葉を使用」といったイメージ戦略も取られました。
当時は、無糖のお茶が商品として受け入れられるよう各メーカーが差別化を図るため、珍しさや高級感を前面に出して推し進め、このうち烏龍茶は、健康茶・美容茶のイメージで知れ渡ることになりました。
これが企業として功を奏して
- 烏龍茶は健康に良いお茶
- 中国茶といえば烏龍茶
- 烏龍茶といえば福建省
というイメージで日本に定着したといえます。
中国においても、確かに福建省は烏龍茶で有名で、歴史は1000年を超えています。
しかし、「中国茶といえば烏龍茶」というわけではありません。
烏龍茶の漢字と名前の由来
烏龍茶の漢字
「ウーロン茶」の「ウー」を表す漢字は「烏」で、「鳥」ではなく「カラス」を意味する漢字です。
中国語では
乌龙茶 [wū lóng chá]
と書きます。
漢字の字体は少し違いますが、日本も中国も共通ですね。
また、
青茶 [qīng chá]
という名前も一般的です。
ちなみに英語では、
oolong tea
と書き、中国語のピンインとは異なります。
烏龍茶の名前の由来
「烏」という漢字は、「黒色」を指す場合があります。
「龍」の字は、サントリーのウェブサイトでの解説によると、「『龍』の字は、皇帝をさす、とても高貴な言葉だったと言われています。」となっています。
実際に宋の時代に福建の烏龍茶が献上されたという記録もあり、妥当な説ではあるのですが、烏龍茶の名前の由来は諸説あって、「これが正しい」と言えるものはありません。
一般的には、
烏龍茶の半発酵された茶葉が「黒い龍の頭部」に似ている
というのが、もっともらしい説として見かけます。
烏龍茶にもさまざまな種類があり、「青茶」とも呼ばれることもあります。
中国語の"青" [qīng]は、時として緑色や黒色を指すことがあります。
ちなみに、中国語で三原色の「青色」は"蓝" [lán]といいます。
ひとことに烏龍茶と言っても、まったく似ていない形や色の茶葉も数多くあります。
とはいうものの、「烏龍茶」が別の植物(茶樹)というわけではなく、緑茶と同じ系統になります。
茶葉の種類もありますが、お茶の違いは発酵の度合いを調整する製造方法も大きく関わっていて、烏龍茶は半発酵させたお茶です。
例えば、紅茶は完全発酵で、シルクロードを旅している間に発酵が進んで紅茶になったというのは定説です。
【参考】 サントリー 「ウーロン茶も紅茶も緑茶も、元をたどればみんなおんなじ。」
これ以外に、産地が由来、茶樹が由来、人の名前が由来など多くの説があります。
後ほどご紹介しますが、烏龍茶の産地としては"福建省" [fú jiàn shěng]が最大で有名なのは事実です。
中国で比較的よく知られているいくつかの説をご紹介します。
烏龍茶の名前の由来 言い伝え その1
当時の茶葉の生産者が山に登って茶摘みを終え、竹かごに新鮮な茶葉を入れ、背負って山を下りました。
山の道は険しく、下山中に新鮮な茶葉が揺れてぶつかり合い、現代の発酵工程に近い香りを生み出すこととなりました。
当時は科学的に発達はしていないため、このような現象を説明することができず、「不思議なお茶」という意味を込めて「烏龍茶」と呼ばれるようになりました。
烏龍茶の名前の由来 言い伝え その2
茶畑の主人が干している茶葉の状況を見に行ったところ、そこに黒い龍(烏龍)が現れました。
彼は驚いて逃げ帰り、何日か経ってからやっと戻って見に来る気になることができました。
しかしそこにあったのは、何日も日光にさらされた酸化したお茶でした。
期待した今までの緑茶ではないのですが、濃厚な香りの美味しいお茶となっていて、主人は「烏龍茶」と呼びました。
烏龍茶の名前の由来 発明者の名前説
最初に烏龍茶の製法を発明した人の名前が、蘇龍さんという人で、肌が黒いことから「烏龍」という愛称で呼ばれていたことから、人々は「烏龍茶」と呼ぶようになりました。
本当にたくさんの種類のお茶がある中国でも、烏龍茶は人気のお茶のひとつで、日本ほどではないにしても愛飲されています。
いろいろな説があるものの、生活に密着しているからこその説が多いようです。
烏龍茶の発音 【音声付き】
烏龍茶の発音は、中国語の発音を表す"拼音"(ピンイン)では
乌龙茶 [wū lóng chá]
となります。
カタカナでは「ウーロンチャー」と表記するのが限界ですが、抑揚が特に大事で図に表すと次のようになります。
- 乌 [wū]: 音に抑揚はなく、そのまま伸ばします。ただ、この音は、日本語の「ウ」よりもかなり唇をとがらせます。
- 龙 [lóng]: 英語の発音の"g"はありません。音は「ロン」ですが、語尾を一気に高くします。
- 茶 [chá]: 「チャー」と伸ばす感じですが、これも語尾を一気に高くします。三重県や関西の一部でも、「茶」とだけ発音する時に語尾が上がる傾向にありますが、もっと極端に上げるくらいでちょうどいい感じです。
実際の音声は、下記の再生ボタンで確認してください。
烏龍茶の発音以外にも、次の単語を収録しています。
- 乌龙茶 [wū lóng chá]
- 福建省 [fú jiàn shěng]
- 青茶 [qīng chá]
- 绿茶 [lǜ chá]
- 红茶 [hóng chá]
- 黑茶 [hēi chá]
- 黄茶 [huáng chá]
- 白茶 [bái chá]
- 麦茶 [mài chá]
- 乌龙球 [wū lóng qiú]
烏龍球とは - 烏龍の違う意味
少し余談です。「烏龍」は「黒い龍」という意味で使われることもありますが、古代中国では「烏龍」は「忠実な犬」という意味で用いられていたと言われています。
現代の中国語では、サッカーなどの「オウンゴール」(「自殺点」とよばれていた)を指す場合があります。
「オウンゴール」というカタカナ語は英語の"own goal"からですが、中国語の"乌龙" [wū lóng]が"own goal"の音に近いということから、"乌龙球" [wū lóng qiú]が代名詞として使われています。
本来の中国語では"自进球" [zì jìn qiú]となります。
なので、「烏龍球」は「烏龍茶」とはまったく関係ありません。
中国茶の産地 - 予想外!?中国全体では烏龍茶は○%
中国には数多くのお茶の種類があり、種類ごとに適した産地があります。
例えば、緑茶はかなり広範囲で栽培されています。
このうち烏龍茶(青茶)の栽培は、主要な地域として最大の産地の福建省をはじめ、広東省、台湾などがあります。
これら以外にも、南方を中心に幅広く栽培されています。
烏龍茶の栽培は中国茶全体の10%程度になります。
福建省の烏龍茶の生産量と輸出額は際立っていて、ダントツの1位です。
これは"武夷山" [wǔ yí shān]という産地の存在が大きく影響しています。
2位の広東省とは、生産量で5倍以上、輸出額では6倍以上の開きがあります。
日本への輸出は、香港・マレーシアに次いで第3位です。
出典: 2020年中国乌龙茶产销量及进出口现状分析,福建省乌龙茶出口量稳居第一
出典: 茶叶大数据:2016年全国乌龙茶产销形势调研报告(生产)
いろいろな烏龍茶の銘柄
烏龍茶の銘柄 十選
最後に、 数多くの烏龍茶の品種の中でも特に有名とされる10種類をご紹介します。
茶葉の形もお茶の色もさまざまです。
下段は日本の漢字です。
出典: 中国10大最知名乌龙茶,你喝过哪几种?爱茶的你喝过才没有遗憾
大红袍 [dà hóng páo]
大紅袍
福建省の武夷山 [wǔ yí shān]で生産される特別な銘茶です。
铁罗汉 [tiě luó hàn]
鉄羅漢
鉄羅漢も武夷山内の岩石に囲まれた山地で、独特の風味があります。
白鸡冠 [bái jī guān]
白鶏冠
武夷山唯一の"道茶" [dào chá] (道家の茶)です。「白い鶏のとさか」の形が名前の由来だそうですが、茶葉は淡い緑色です。
水金龟 [shuǐ jīn guī]
水金亀
武夷岩茶の4つに入る銘柄です。烏龍茶(青茶)と緑茶の両方の特徴を併せ持っています。
武夷水仙 [wǔ yí shuǐ xiān]
武夷水仙
歴史的に有名なお茶で、茶樹の品種で命名されました。
安溪铁观音 [ān xī tiě guān yīn]
安渓鉄観音
日本でも有名な「鉄観音」のひとつで、中国十大名茶のひとつにも入っています。茶葉の形は楕円、葉肉は肥厚で、濃い緑の光沢があります。茶の名前でもあり、茶樹の名前でもあります。
黄金桂 [huáng jīn guì]
黄金桂
烏龍茶の中でも鉄観音とは異なる風格を持った、もうひとつの一級品です。
冻顶乌龙 [dòng dǐng wū lóng]
凍頂烏竜
こちらは台湾産です。台湾南投県鹿谷郷の凍頂山一帯で生産されています。
东方美人 [dōng fāng měi rén]
東方美人
こちらも台湾産の銘茶です。「白毫烏龍茶」とも呼ばれます。目立った白の中に赤・青・黄・褐色が混ざった美しい花のように見えることが名前の由来です。
凤凰单枞 [fèng huáng dān cōng]
鳳凰単枞
主に広東省潮州市の鳳凰山で生産されている、唐時代にまでさかのぼる長い歴史があります。鳳凰単枞には、数多くの品種があります。
今回もお読みくださり、ありがとうございました。
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