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中国の簡体字と日本の漢字(新字体)
中国の簡体字
中国では、簡体字(かんたいじ)と呼ばれる、簡略化した字体の漢字が使われます。
簡略化の意味は、長年の時をかけて定着した漢字を基に、画数を少なくするなどの目的で簡単な漢字にすることです。
基となる漢字は繁体字(はんたいじ)と呼ばれ、現在でも台湾・マカオ・香港などにおいて、一般的に使用されています。
中国の簡体字化の動きは1935年8月からはじまり、1986年に現在の基礎となる《简化字总表》 [jiǎn huà zì zǒng biǎo](日本の漢字で「簡化字総表」・中国の略称《总表》)が公布されました。
日本の漢字(新字体)
繁体字には、日本の旧字体と同じ、もしくは近い漢字が多く見られます。
日本では、1942年には国語審議会が、それまでの常用漢字に代わる「標準漢字」を選定し、1948年に「当用漢字字体表」としてまとめられました。この漢字が新字体で、現代の日本の漢字です。
日本の旧字体と新字体の関係は、繁体字と簡体字の関係に似ています。(が、旧字体は現在の日本では使用されていません。)
このように、起源は同じ漢字なのですが、中国と日本では独自の簡略化が進められたため、一部において、大きく異なる漢字があります。
また、まったく同じ漢字も数多くあり、小さな違いの漢字も数多くあります。
このため、中国の簡体字であっても日本の漢字であっても、同じ漢字として認識できることは多いのですが、この記事では「大きく異なる漢字」に焦点を当てて、例を見ていきたいと思います。
これで、中国語の文章の意味が なんとなくでも理解できることも多くなりそうですよ!
日本の漢字と中国の簡体字の違いの特徴
見比べてみると分かるものから、「なぜこうなったのか!?」というほど、原型不明と思えるものまでいろいろです。
学習ノートというよりは、パズル感覚でざっと流しながら、ご覧ください!
部首が大きく異なる漢字
はじめに、日本の漢字と簡体字も元の漢字は同じでも、部首になると簡略化されるものです。
代表的なこの4つを覚えておくだけで、かなり理解が進みます。
- 言偏(ごんべん)
- 食偏(しょくへん)
- 金偏(かねへん)
- 糸偏(いとへん)
部首を略した結果に重複がある漢字
日本の漢字では違う部首でも、簡体字では同じ"又"になる例もあります。
※ []内に中国語の発音記号「ピンイン(拼音)」を表記しています。 (複数の読みのある"多音字" [duō yīn zì]は代表的な読み)
漢 汉 [hàn]
鶏 鸡 [jī]
観 观 [guān]
歓 欢 [huān]
権 权 [quán]
漢字によって略した方が異なる漢字
日本の漢字では同じ漢字でも、簡体字では部首になると略した結果が異なる例もあります。
種 种 [zhǒng]
動 动 [dòng]
ちなみに、"重"も"中"も単体の漢字では音は似ています。
- 重 [zhòng]
- 中 [zhōng]
ですが、
- 种 [zhǒng]
- 动 [dòng]
は、違います。
中には、基本的な漢字の略し方と部首の場合で微妙に異なる場合もあります。
↓
- 東 东 [dōng]
- 棟 栋 [dòng]
- 練 练 [liàn]
漢字の基本形として異なる漢字
先ほどの
東 → 东
のように、漢字の特徴は残していますが、簡略化した結果、他の字ともよく似てくる漢字もあります。
東 东 [dōng]
車 车 [chē]
楽 乐 [lè]
頭 头 [tóu]
実 实 [shí]
売 卖 [mài]
買 买 [mǎi]
業 业 [yè]
亜 亚 [yà]
画数を少なく
漢字単体として、簡体字の方が画数が少なくなっている例は、数多くあります。
これらは部首としても同様の変化が見られます。
貝 贝 [bèi]
見 见 [jiàn]
長 长 [cháng]
門 门 [mén]
4点が線になる例もあります。
魚 鱼 [yú]
馬 马 [mǎ]
鳥 鸟 [niǎo]
例外もありますので、ご注意を!
黒 黑 [hēi]
多くの場合は、略し方にはある程度のパターンがあります。
場 场 [chǎng]
両 两 [liǎng]
師 师 [shī]
傘 伞 [sǎn]
筆 笔 [bǐ]
誤 误 [wù]
漢字の一部の特徴を残して、大胆に省略されている漢字はたくさんあります。
気 气 [qì]
飛 飞 [fēi]
広 广 [guǎng]
産 产 [chǎn]
厳 严 [yán]
開 开 [kāi]
関 关 [guān]
電 电 [diàn]
亀 龟 [guī]
風 风 [fēng]
網 网 [wǎng]
中には、略し過ぎて原形をとどめていない、と思えるものも…
無 无 [wú]
從 从 [cóng]
個 个 [gè]
幾 几 [jǐ]
書 书 [shū]
児 儿 [ér]
豊 丰 [fēng]
衆 众 [zhòng]
衛 卫 [wèi]
大胆な部首の簡略化
部首も大胆に略されますが、見比べると「なるほど」と思うのは面白いところです。
陽 阳 [yáng]
雲 云 [yún]
雑 杂 [zá]
過 过 [guò]
掃 扫 [sǎo]
譲 让 [ràng]
親 亲 [qīn]
習 习 [xí]
為 为 [wèi]
熱 热 [rè]
隊 队 [duì]
蘭 兰 [lán]
橋 桥 [qiáo]
偉 伟 [wěi]
標 标 [biāo]
塩 盐 [yán]
歴 历 [lì]
態 态 [tài]
進 进 [jìn]
認 认 [rèn]
職 职 [zhí]
直前の5つの例は、それぞれの略された部首の漢字の発音を考えると納得できそうですね。
- 力 [lì]
- 太 [tài]
- 井 [jǐng] *声調違い
- 人 [rén] *声調違い
- 只 [zhǐ] *声調違い
パソコンやスマホでは、同じ表示になってしまう漢字もあります。
日本語では別の漢字
中には、日本の漢字では違う字でも、略した結果は同じ字になる例もあります。
同じ意味の漢字の場合もありますが…
竜 龙 [lóng]
龍 龙 [lóng]
準 准 [zhǔn]
准 准 [zhǔn]
※ 地名や姓で"淮" [huái]という漢字もありますので、ご注意を!
そうでない場合もあります。
机 机 [jī]
機 机 [jī]
麺 面 [miàn]
面 面 [miàn]
他の字と似ている漢字
略した結果、他の違う漢字に見えてしまう例もあります。
麽 么 [me]
発 发 [fā]
価 价 [jià]
義 义 [yì]
術 术 [shù]
郷 乡 [xiāng]
滅 灭 [miè]
務 务 [wù]
葉 叶 [yè]
撃 击 [jī]
訳 译 [yì]
達 达 [dá]
薬 药 [yào]
護 护 [hù]
倣 仿 [fǎng]
簡体字の方が複雑だった
「簡体字は画数が少ない」と思いきや、日本の漢字の方が簡略化されている漢字もあります。
図 图 [tú]
桜 樱 [yīng]
弁 辫 [biàn]
円 圆 [yuán]
沢(澤) 泽 [zé] [shì]
伝 传 [chuán] [zhuàn]
恵 惠 [huì]
拝 拜 [bài] [bái]
簡略化になっていない
中国のすべての漢字が、大胆に簡略化されているとは限りません。
ほぼ繁体字のまま、もしくはまったく同じという、画数の多い漢字も残されています。
腻 [nì]
赢 [yíng]
囊 [náng]
国独自の漢字
実は日本だけの「国字」(和製漢字)
日本では通常使われている漢字には、日本だけの国字(和製漢字)があります。
これらの漢字は、中国では使われていませんので、ご注意を!
※ 中国語としての読みが割り当てられている場合もあります。
よく見られる国字(和製漢字)の例をあげてみます。
※ 代表的な読みを併記しています。
働 はたら・く | 凧 たこ | 噺 はなし | 辻 つじ | 桝 ます |
畑 はたけ | 畠 はたけ | 椙 すぎ | 栃 とち | 榊 さかき |
笹 ささ | 塀 へい | 鋲 びょう | 雫 しずく | 躾 しつけ |
簱 はた | 籾 もみ | 粂 くめ | 糀 こうじ | 蛯 えび |
この他にも、魚偏のつく漢字には、国字がたくさんあるようです。
日本にはない漢字
逆に、日本にはない(または まず使わない)けど、中国ではよく使う漢字は、さらにたくさんあります。
ここでは特に頻出する漢字を、少しだけご紹介します。
你 [nǐ] | 您 [nín] | 她 [tā] | 它 [tā] |
吃 [chī] | 甜 [tián] | 辣 [là] | 咸 [xián] |
吗 [ma] | 吧 [bā] | 哦 [ò] | 呀 [yā] |
嗯 [èn] | 呢 [ne] | 哈 [hā] | 卡 [kǎ] |
いかがでしょうか?
これら以外にも、日本の漢字と中国の簡体字で異なる漢字はたくさんありますが、この感覚を身に着けると たいてい違和感がなくなります。
筆者は手書きの文字よりもパソコンやスマホで字を書くことの方が多いため、手書きする機会は中国語の方が多いかもしれない、といった状況です。
そのため、さっと書いた漢字が簡体字だった…ということも…
これはこれで才能ないのかも…と落ち込むこともありますが、この逆の現象が、日本で生活している中国語の先生にも見られたので、変な安心感と親近感を持ってしまいます。
今回もお読みくださり、ありがとうございました。
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