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中国南方の標準中国語(普通話)は発音に違いがある?
中国語には標準語となる"普通话" [pǔ tōng huà]があり、一般的に中国語というと"普通话"を指して、中国語検定やHSKといった試験の"听力" [tīng lì] (聞き取り)問題も、この発音で実施されますね。
「試験も良い成績で通ったし、これで中国語は聞き取れる」と思いたくもなりますが、試験問題のように丁寧にはっきり・ゆっくり話す人は皆無です。(中国語に限らず、日本人もアナウンサーのように話す人はいませんね。)
一般の会話との違いも当然あるのですが、いろいろな動画などを見ると、表示される字幕とも違って聞き取れないこともあると思います。
何が原因なのでしょうか?
中国で方言というと外国語レベルに違う可能性もあって、そこまで大きくは違わず、ところどころが意味不明になる時は、話しているのは"普通话"だけどその人の地方によって発音に特徴がある可能性が高くなります。
中国といっても各地方でそれぞれ大きな特徴があるのですが、一般的に南方人の"普通话"は違いに法則性があるようです。
中国南方で話される標準中国語(普通話)の発音の違いを、傾向としてまとめてみました。
中国南方人の標準中国語(普通話)の発音の違い
1. “鼻音”(鼻母音)の”前鼻音”と”后鼻音”の区別が明確でない
南方の多くの地方では、鼻音(鼻母音)の[ng]と[n]の区別をつけて話すことがなく、また一般的に、聞く方についても得意ではないようです。
例
- 拼 [pīn] - 平 [píng]
- 分 [fēn] - 风 [fēng]
- 名 [míng] - 民 [mín]
- 称 [chēng] - 趁 [chèn]
- 英 [yīng] - 因 [yīn]
- 音响 [yīn xiǎng] - 影响 [yǐng xiǎng]
2. “平舌音”と”翘舌音”の区別が明確でない
"平舌音" [píng shé yīn]には、[z][c][s]の3つ
"翘舌音" [qiào shé yīn]には、[zh][ch][sh][r]の4つがあります。
2番目の特徴は、この"翘舌音"の[h]を発音しない傾向があるということです。
つまり[sh]→[s]・[zh]→[z]・[ch]→[c]のように変化します。
例
よく出てくる表現をあえてカタカナで書くとすれば
- 我是 [wǒ shì]: [ウォー シー]→[ウォー スー]
- 吃饭 [chī fàn]: [チー ファン]→[ツー ファン]
のような感じになります。
この法則のとおり、「(ごはんが)おいしい」の"好吃" [hào chī]も[ハオ チー]ではなく[ハオ ツー]に聞こえます。
3. [r]と[l]の区別が明確でない
先ほどの"翘舌音"の残りのひとつに[r]がありましたが、これを[l]と区別しないのも特徴です。
この特徴は日本人も同様ですので、英語だけでなく中国語でも難しいところかもしれません。
中国語の勉強を開始したのに「私は日本人です」と言えない壁は、誰もが体験したといっても過言ではないかもしれません。
この短い"日本人" [rì běn rén]という単語に、母音の違う"r"が2回も出てきます。
南方人の発音も"日本人"は[lì běn lén]に聞こえる傾向にあります。
同様に"润" [rùn]も"论" [lùn]となります。
なので、「なんだか南方人みたい」と思えば、少しは気が楽になるかもしれませんね。
4. [n]と[l]の区別が明確でない
湖南・湖北・雲南・四川などの地方では、[n]も[l]の発音になる傾向があるといいます。
つまり[r]も[n]も、[l]のような発音になるのは難しいところです。
これまでを考えると、自己紹介の時に
"我是南方人" [wǒ shì nán fāng rén]
という場合に [wǒ sì lán fāng lén]
になるという特徴が見えてきました。
もしかするとネット用語で"蓝瘦香菇" [lán shòu xiāng gū] (直訳で「青細い しいたけ」)の表記を見たことがあるかもしれません。これは南方の発音で、"难受,想哭" [nán shòu, xiǎng kū] つまり「つらいよ、泣きたいよ」などと つぶやいたのですが、"蓝瘦香菇"に聞こえてしまい、ネット上で大ブレイクしたことからネット用語として定着しています。
5. [h]と[f]の区別が明確でない
広東の"客家方言"地区では[h]と[f]の区別がなくなる傾向にあります。
この違いの難しさは、多くの日本人にとっても共感できるところだと思います。
[h]は日本語の「は行」に近いですが、日本語には[f]はありません。
意識的に、上の歯で下唇を噛むように押し当てるだけではあるものの、会話の中で自然にするにはそれなりの訓練が必要になりますね。これは英語の発音でも同じことが言えます。
中国語の例では"花" [huā]と"发" [fā]が同じように聞こえる、ということになります。
6. [uan]と[an]の区別が明確でない
これは湖北や江西などの地方で見られる傾向とのことです。
"关" [guān]が"干" [gàn]に聞こえたり、"感观" [gǎn guān]が同じ字の繰り返しに聞こえたりするといわれます。
7. [un]と[en]の区別が明確でない
湖北などの地方では、[un]と[en]の区別が明確ではなく、例えば"论据" [lùn jù]は[lèn jù]になる傾向があるといわれています。
8. [u]と[ü]の区別が明確でない
また、[u]と[ü]の区別がなくなる傾向にあり、"录" [lù]と"绿" [lǜ]や"女" [nǚ]と"努" [nǔ]の区別がつきづらいといいます。
9. [iu]と[ü]の区別が明確でない
海南などの地方では[i]と[u]の区別が明確でなく、[ü]を発音する時の舌の位置は[i]で、口の形は[u]となりやすいことから、[iu]と続くときに[ü]と同じようになるといわれています。
例えば、"就" [jiù]と"句" [jù]が同じような発音となります。
いかがだったでしょうか?
これが南方のすべてに当てはまるものではなく、逆にこれがすべてとも言えないのですが、このような発音の違いを知っておくと、気持ち的にかなり違うのではないかと思います。
南方人かを確かめるために
四是四,十是十,十四是十四,四十是四十
[sì shì sì, shí shì shí, shí sì shì shí sì, sì shí shì sì shí]
を読んでもらう、なんて冗談もあるようです。
中国語を勉強している身にとっては、一生懸命にピンインを覚えて発音練習もしているのに伝わらない、なんてこともありますね。
南方の発音はこんなに違いがあっても伝わることを考えると少し悔しい気もしますが、中国人同士でもお互いの発音に慣れながら理解を深めていくと思えば、正確な発音だけにとらわれて何も話せないよりは、少しずつでも話して、例えば北方発音・南方発音など、自分の目指すところに近づけていければ良いのでは、と思っています。
今回もお読みくださり、ありがとうございました。
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