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中国語: 「料理名」「お酒」の「ちゃんぽん」は中国語が由来!?

中国語: 「料理名」「お酒」の「ちゃんぽん」は中国語が由来!?
「ちゃんぽん」の語源は中国語!?

長崎発祥で有名な麺料理「ちゃんぽん」や、いろいろなお酒の種類を変えながら(混ぜて)の「ちゃんぽん」飲みの語源は中国語、という説があります。

「ちゃんぽん」の語源には、「江戸時代の花街(遊郭や芸者屋)における、賑やかで無秩序な様子」という説も見られますが、中国語が語源という説もあります。

この記事では、特に「中国語が語源」という説について、読み物として深く掘り下げてみます。

この記事での結論

「ちゃんぽん」の語源には他にもいくつかの説があり、確定したものはありません。

「ちゃんぽん」の語源は断定できないものの、中国の福建語

「混ぜる」を表す語

掺混 (福建語で[chham hun4])

※ あえてカタカナ表記にすると「チャンフン」

または

「ごった煮」を表す語

攙烹 (福建語で[chham peng1])

※ あえてカタカナ表記にすると「チャンパン」

というが有力で

「長崎ちゃんぽん」の命名はこの語を使ったもの

で、福建語由来の日本語化という考えが、最も支持できる説と考えます。

まとめに移動


はじめに、「ちゃんぽん」という言葉が確認できる時期を見てみましょう。

「江戸時代の花街が語源」説

この「江戸時代の花街が語源」説は、1822年(文政5年)の洒落本「花街鑑」(鼻山人(三笑亭可楽)著)に「芸者の滑稽、チリツルテン、ちゃんぽんの大さわぎ」という描写があることから、ということです。

この「ちゃんぽんの大さわぎ」とは「ごちゃ混ぜになった、賑やかな大騒ぎの様子」を表しています。

フリー百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」では

ちゃんぽん
用例は江戸時代から見られる。語源集では、江戸時代の洒落本に見られる鉦(かね)の音(ちゃん)と鼓の音(ぽん)の擬音語をつなげたものだという説明が多くみられる。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

という説の他に、中国語説も紹介されています。

少なくとも、「ちゃんぽん」という言葉は、江戸時代後期には存在していた、といえます。

この江戸時代、1639年~1854年は日本は鎖国状態にありました。

でも、中国語は関係がない、とも言い切れません。鎖国状態でも長崎は開港していて、福建人を中心に多くの華僑が来住していました。


酒の「ちゃんぽん」の由来

1回の飲みで、いろいろな種類のお酒を飲むことを「ちゃんぽん」と呼びます。

この「ちゃんぽん」という飲み方は、直接的ではないものの江戸時代には既に宴席での「ちゃんぽんの大さわぎ」という用法があったことと通じるものがあります。

この酒の飲み方の「ちゃんぽん」が、いつから始まったのかという明確な時期を示す文献は確認できないので推測の域を出ませんが、江戸時代から既に使われていても不思議ではありません。

もっとも、江戸時代は日本酒が一般的で、日本酒の種類は複数ありましたが、現代のようなビールやワイン、ウイスキーが一般的になったのは明治時代以降です。

江戸時代には「びいどろ」や「カステラ」など、長崎由来の語彙が遊郭文化や芝居を通じて江戸に広まる例も多くありました。

「長崎ちゃんぽん」の登場時期は明治時代で、「長崎ちゃんぽん」から「ちゃんぽん」飲みの表現につながった、という時系列を決定できるものではありません。

ただ、ここで言えるのは、江戸時代には既に「ちゃんぽん」=「ごちゃ混ぜ」という概念があったと考えられます。


「長崎ちゃんぽん」の由来

「ちゃんぽん」の命名

長崎発祥で有名な麺料理「ちゃんぽん」について、中華料理四海樓の創業者である陳平順氏が「ちゃんぽん」の生みの親、という話が紹介されていて、いくつかのガイドブックにも紹介されています。

「ちゃんぽん」の生みの親は、中華料理四海樓の創業者である陳平順です。1899(明治32)年に長崎に来ていた中国人留学生や華僑同胞のために美味くてボリュームがあり、栄養価が高く安価なメニューを模索し、鶏ガラと豚骨のスープと長崎でとれる山海の幸をふんだんに使った麺料理を考案しました。当初はメニューにない料理で「支那饂飩」とよばれていましたが、当時の長崎華僑が交わしていた福建語の挨拶言葉“シャポン”または“セッポン”(ご飯を食べるという意味)から「ちゃんぽん」とよばれるようになりました。

中華料理四海樓

一方、日本で「長崎ちゃんぽん」の最大手チェーン「リンガーハット」のウェブサイトには、このように解説されています。

長崎ちゃんぽんのルーツ

鎖国時代、唯一の開港地であった長崎・出島には独特の文化が生まれました。開国後の明治時代中期、中華料理店の店主が、当時日本に訪れていた、多くの貧しい中国人留学生に、安くて栄養価の高い食事を食べさせるために考案された、と言われています。その後、留学生の間で人気となり、長崎に定着しました。

ちゃんぽんの語源はいろいろとあり、中国の福建語の挨拶「吃飯」(シャポン・セッポンと発音)や「混ぜる」を意味することば「掺混」からちゃんぽんと呼ばれるようになった、という説もあります。

リンガーハット 「長崎ちゃんぽんのルーツ」

ここには共通点と違いがあります。

共通点
  • 「ちゃんぽん」は明治時代に長崎で発祥
  • 中国人留学生に食べさせるために考案された
  • 語源として「ご飯を食べるという意味」からとされている
相違点
  • 四海樓は当初「支那饂飩」と呼ばれていたと説明している
  • リンガーハットは「四海樓」発祥とは明記していない
  • リンガーハットは「混ぜる」を意味することば「掺混」からちゃんぽん、という説も併記している

この2つを考えると、いろいろな疑問も出てきます。


鎖国当時の長崎での中国語

疑問点に入る前に、「中国語」について少し考えてみましょう。
現代では、中華人民共和国(中国大陸)の共通語は「普通話」ですが、これは建国(1949年)よりもずっと昔の話です。

「唐船風説書」を史料とした長崎大学などの調査では、江戸時代に長崎へ来住した華僑の出身地は、福建系が圧倒的多数であったとされています。

福建語は「閩方言」と位置づけられていますが、最も複雑で内部の相違も最も大きいとされていて、閩東語と閩南語が多数であったものの、その間には隔たりもあったと考えられます。

「ちゃんぽん」に話を戻すと、この時代の長崎での中国語だった「福建語」(閩方言)を中心に考えていくのが妥当と言えます。


「長崎ちゃんぽん」命名についての疑問

「ちゃんぽん」は「中国人留学生に食べさせるために考案された」という点は一致しています。
「中華料理四海樓の創業者である陳平順です。」という点では、陳平順氏は福建人ですので、唯一の生みの親かどうかは別にしても自然と言えます。

この「福建人が同胞の留学生のために提供した」という背景を考えると、逆に疑問が浮かびます。

福建人の閉じたコミュニティで生まれた

本来は福建人による福建人のための料理であるのに、「支那饂飩」や"吃飯"(ご飯を食べる)が料理名になるとは考えづらいのでは?

ということです。つまり、

  • 初期の「支那饂飩」という呼び名
    福建人は自国を「支那」と呼ぶとは考えづらいのでは?
  • 福建語の挨拶「吃飯」
    「ご飯を食べた?」というのがあいさつとして話されるのは一般的なものの、「福建語」(閩方言)では"吃飯" の発音は[chiah8 beng6]で音としては近いが、福建人による命名とは考えづらいのでは?

こうみると、「長崎ちゃんぽん」の名前の由来には、もっと別の背景があるように思えてなりません。

もっとも考えられるのは、後に日本人が名付けた、ということが十分に考えられます。
日本語の「ちゃんぽん」(混ぜる・ごちゃ混ぜ)という既存語があって、日本人が料理名として呼び始めた、という可能性です。
伝承によるずれの発生や、商業的な後付けがあったとも考えられます。

現代中国語では、「ちゃんぽん」は"强棒面" [qiáng bàng miàn]よりも"长崎杂烩面" [cháng qí zá huì miàn]として知られています。


「ちゃんぽん」の中国語(福建語)

"掺混"説

リンガーハットのウェブサイトにある説明では、「ちゃんぽん」の語源説のひとつとして"掺混"をあげています。

この「福建語」(閩方言)は

掺混 [chham hun4]

となります。

それぞれの漢字の意味は、次のようになります。(出典: 漢字辞典オンライン)

  • 細い。小さい。女性の手がほっそりとしなやかなさま。
  • 取る。手に取って握る。
  • 混ぜる。

  • まじる。まざる。まぜる。入り乱れる。区別がなくなる。込み合う。
  • にごる。にごす。黒くにごっているさま。暗くはっきりみえないさま。
  • 水が盛んにわき出るさま。水が流れるさま。

いろいろな食材が混ぜ合わさった料理、という意味で自然につながる表現と言えます。


"攙烹"説

「ちゃんぽん」の語源が中国語、という別の説では、"攙烹"という単語、「混ぜて煮る」(ごった煮)が語源、という説があります。

この「攙」と「烹」という漢字には、それぞれ次のような意味があります。

  • 鋭く差し込む。
  • まぜる。
  • 手を貸す、支援する。

  • 煮る。
  • 料理。

まさに「ごった煮」を意味する言葉です。

では、「福建語」(閩方言)での発音を見てみましょう。

攙烹 [chham peng1]

あえてカタカナ表記にすると「チャンパン」ですが、「ちゃんぽん」という表現に十分に近いといえます。
この説の方が、料理の性質に最も合い、料理名としても成り立つといえます。


"掺混"も"攙烹"も、「ちゃんぽん」という語形を連想させる音とも考えられますが、明確な文献が少ないので裏付けが難しくなります。(実際には文献に残らない日常語は数多く存在しているため、誤りとも言えません。)


明治時代には、横浜から広東系の華僑も多く来日しました。
参考までに「広東語」(粤方言)では

掺混 [saam1 wan6]

※ あえてカタカナ表記にすると「サンワン」

攙烹 [caam1 paang1]

※ あえてカタカナ表記にすると「チャンパン」

となります。


現代中国語(普通話 = 北京語が基本)では

掺混 [chān hùn]

※ あえてカタカナ表記にすると「チャンフン」

搀烹 [chān pēng]

※ あえてカタカナ表記にすると「チャンパン」

となりますが、現代中国語は考慮に入れない方が自然でしょう。


音の変化について

福建語の"掺混" [chham hun4]や"攙烹" [chham peng1] という発音は、日本語の「ちゃんぽん」と一致しているわけではありません。

でも、外国語が日本語に取り入れられるときには、音がある程度変化することは珍しくありません。
日本でもおなじみの、「拉麺(ラーメン)」(中国語発音 [lā miàn])や「炒飯」(中国語発音 [chǎo fàn])も同じような傾向があります。

例えば、次のような変化は比較的よく見られます。

m → n の変化

福建語の"chham"の最後の"m"は、日本語に取り入れられると"n"に近い音として表されることがあります。
日本語には音節末の"m"の発音はないため、「ん」に置き換えられることがよくあります。

また、"攙烹" [chham peng1]を考えた場合、

eng → on の変化

"peng"の"-eng"の部分も、日本語では完全に再現できないため、「ぱん」や「ぽん」に近づく可能性があります。
中国語の"-eng"や"-ang"などが、日本語では「おん」「あん」のように表される例もよく見られます。

子音の変化

外来語では子音が日本語の音体系に合わせて多少変化することもあります。
このため"peng" → "pon"のような変化が起きても、必ずしも不自然とは言えません。


このように、完全に同じ音ではないものの、

[chham hun4]または[chham peng1] → 「ちゃんぽん」

という音の近さは、語源の可能性を考える上で一定の説明となりえます。


まとめ

江戸時代には既に「ちゃんぽん」が「ごちゃ混ぜ」や「騒ぎを表す」という意味合いで用いられていました。
その語源は明確ではないものの、既に「ごちゃ混ぜになった、賑やかな大騒ぎの様子」を表していました。

一方、長崎名物「ちゃんぽん」は明治時代に生まれ、福建人の間で親しまれました。
この後、長崎から日本全国に広まっていきました。

江戸時代は鎖国中でしたが、開港していた長崎には多くの福建人が在住していました。
江戸時代には長崎由来の語彙が遊郭文化や芝居を通じて江戸に広まる例も多くありました。

「福建語」(閩方言)で「まぜる」を意味する"掺混" [chham hun4]または「ごった煮」を意味する"攙烹" [chham peng1]も「ちゃんぽん」という表現として、江戸時代に長崎から日本全国に広まったと考えるもの不自然ではありません。

この記事では、「ちゃんぽん」は福建語由来の日本語化という考えが、最も支持できる説と考えています。

真相は不明ですが、「ちゃんぽん」という表現は、日中交流の上に成り立っていたことを推測できる、奥の深い歴史的背景があります。


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