英語で動物と食肉の呼び方が違う場合がある理由
鶏の英語に関する記事で「牛は"cow"で牛肉は"beef"、豚は"pig"で豚肉は"pork"など、生きている場合と食肉の場合で呼び方が変わりますが、「chicken」は不変」とご紹介しました。
今回は、この点についてちょっと掘り下げた話題です。
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動物と食肉の呼び方が同じ例・違う例
呼び方が変わるもの、変わらないものをいくつか書き出してみました。
動物と食肉の呼び方が同じ例
まず、変わらないものです。
動物を表す単語 → その肉を表す単語
- 鶏 = chicken → chicken
- 鴨 = duck → duck
- 子羊 = lamb → lamb
ところで馬は、馬肉になると肉(meat)という単語がつきます。
これは、馬は食肉としていなかったという文化の違いからでしょう。
鯨肉やヤギについても同様です。
- 馬 = horse → horse meat
- 鯨 = whale → whale meat
- ヤギ = goat → goat meat
ただ、欧米では馬肉や鯨肉はまったく食べないか、というとそういうわけではなく、あくまで一般的でなはい、という感じです。
ヤギ肉はカレーなどで広く食されていますが、インドの"mutton curry"は"mutton"とつくものの、ヤギ肉を指しています。中国語で「羊」という漢字は、羊とヤギの両方の意味があるので、中国と隣接するインドでも、共通の文化があるようです。
英語圏ではないですが、北欧のノルウェーは食用としてのミンククジラの捕鯨が盛んとして有名な国でした。
ペリー来航(黒船来航)
1853年(嘉永6年)、鎖国を続けてきた日本に、アメリカのペリーが艦隊を率いて浦賀に来航し、軍事力をもって開国を迫った「黒船来航」の歴史があります。
来航の理由は、2つあったといわれています。
- 当時のアメリカと清(中国)との貿易のため、中継基地として日本の港の開放を求めた。
- 日本の近海での捕鯨も盛んで、燃料や食料の補給をするための捕鯨基地とするよう求めた。
当時のアメリカの捕鯨の目的は、鯨の脂を灯油や工業用の潤滑剤などとして使用するためですが、捕鯨船の食糧事情の悪さから、鯨肉も乗組員の食料としていた記録があるとのことです。
中国での馬肉や鯨肉
ちなみに中国は、多種多様な動物を食材にする印象があるかもしれませんが、馬肉や鯨肉は食用になるものとは思われていません。(食べると言うとドン引きされてしまいます…)
動物と食肉の呼び方が違う例
そして、完全に変化してしまうものです。
この項目では、それぞれの英単語の右側にカッコ書きでフランス語を追記しました。
- 牛 = cow (vache)
→ beef (boeuf) - 子牛 = calf (veau)
→ veal (veau) - 豚 = pig (cochon)
→ pork (porc) - 羊 = sheep (mouton)
→ mutton (mouton)
肉を表す単語が、英語とフランス語でとても近いことに気づかれましたか?
元の動物を表す単語は、近くありません。
これには、こんな由来があるといわれています。
ノルマン人によるイングランド征服
1066年にノルマン・コンクエスト(The Norman Conquest of England・ノルマン征服)という、ノルマン人によるイングランドの征服がありました。
この時から、ウィリアム I世による支配がはじまりました。ノルマン人は、ノルマンフランス語を話していたため、これ以降はフランス語が上流階級の言語となりました。
このため、庶民の言語は(古代)英語のままでしたが、多くのフランス語が英語に浸透していきました。
畜産を主体とする庶民の間では、動物の呼び名としてそのままの英語を使用していましたが、上流階級は食肉としてフランス語で呼んでいました。これが庶民の間で広まったといいます。
つまり、
当時のイングランドの「おフランス的な」感覚が英語を変えていった
ということになりますね。
言葉は時代と共に変わります。
言語は さまざまは歴史的・文化的な影響を受けて、刻々と変化していくものなのですね。
今回もお読みくださり、ありがとうございました。
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