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中国語: 日本人に食事にも欠かせない「箸」のお話 – 中国の箸の歴史と日本との違い

中国語: 日本人に食事にも欠かせない「箸」のお話 - 中国の箸の歴史と日本との違い
中国の箸の歴史と日本との違い

日本人にとって毎日の食事に欠かせない「箸」ですが、中国から伝わったものであることは有名です。

でも、中国語では「箸」のことは"筷子" [kuài zi]と言いますし、長さも日本の「箸」より長く、形も違います。

英語で「箸」は"chopsticks"といいますね。これは「切る」「刻む」を意味する"chop"と「複数の棒」を意味する"sticks"が合わさってできた言葉ですが、文化がなかったためでしょう。微妙な訳の単語として根付いていますね。

今回は、「箸」の歴史についてのいろいろなお話です。

箸を使う国

世界では、人口の約40%は手づかみでの食事を基本としていて、30%はナイフとフォークを、別の30%は箸を使用しているといわれています。

箸を使うのは世界人口の約30%
箸を使うのは世界人口の約30%

唐の時代以前に箸を使う文化が輸出され、箸を使う30%に、主に中国・日本・韓国・北朝鮮・ベトナム・モンゴル・シンガポール・マレーシアなど10億人を超え、15億人に迫る人口です。


箸の生まれた時代

箸の歴史は3000年以上!匙(さじ)やフォークはもっと古い

中国では、かなり早い時代から食事のための道具がつかわれており、匙(スプーン)である"勺子" [sháo zi]は8000年の歴史を持っており、フォークである"叉子" [chā zi]は約4000年といわれています。

箸については発明された時代は確定できないですが、少なくとも3000年の歴史があると認識されています。

中国古来の"叉子"("餐叉" [cān chā])は、戦国時代までは(紀元前5世紀~紀元前3世紀ほど)は使われていた証拠としての出土や書物は非常に少ないですが、"勺子"と"筷子"については秦の時代(紀元前905年~紀元前206年)前には用いられていたことが明確で、"勺子"はご飯用、"筷子"は汁ものの具を食べるのに使われていたことが明確に残っています。

汁ものは火を通している熱いものであるため、当初は木の枝で代用されたといわれていますが、箸の登場は必然的であったといえます。


箸の普及はお上から

中国内でも、長年の歳月をかけて伝来していった箸ですが、当初は庶民のものではありませんでした。

肉を切る刃物は存在していましたが、刃物は当時の認識では武器であり、刃物と使い手は敵とみなされる場合もあることから、中国ではこのような刃物を食卓に出すことを嫌いました。

そこで、刃物を使うのは厨房内のみとして、食卓は平和の象徴となるよう、箸と匙が中心になっていったといわれています。


箸の呼び名

中国でも”箸”の漢字を使っていた時代があった

秦の時代前には、"梜" [jiā] (または"夹"と表記)と呼ばれていました。
漢字から、挟む道具であることが想像できます。

その後、漢の時代(6~7世紀)には書物に"箸" [zhù]という名称が残っています。
また"筯" [zhù]という漢字が当てられることもあったようですが、この明確な由来は不明のままです。

日本に箸が伝わったのは7世紀ごろ、といわれていますので、当時の漢字とともに伝わったと考えるのが妥当です。


中国で”箸”の呼び方が変わったのは縁起担ぎ!

その後、長い年月が経ち1368年以降の明の時代から、現在の中国語"筷子"のもとになる呼び方が始まったといわれています。

"吴中" [wú zhōng](現在の蘇州 "苏州" [sū zhōu])では、船民や漁民から"箸"という呼び名は"住" [zhù]と同じ発音であることから、船が立ち往生するということで避けられ、縁起を担いで「速い」を意味する"快" [kuài]と呼ばれるようになりました。

その後、この字に竹冠をつけて"筷子"という呼び名が生まれましたが、地方の庶民の縁起担ぎがすぐに広まることははなく、皇帝により定められた秦の時代に広まったといわれています。

秦時代の末期には"筷子"という呼び名の方が圧倒的に多くなったといわれています。


日本の「箸」の漢字には「点」がある!?

「箸」という漢字をよく見ると、「者」の部分に点がひとつあります。
「者」という漢字には点が無いのですが、このような違いは「賭」にも見られます。

箸 賭

常用漢字表の字体では、「点がある」字体での記載ですが、文化庁によると「手書き文字と印刷文字の表し方の習慣」から、「点が無いと間違い」とはしていません。

パソコンのフォントを見てみると、「点がある」のがほとんどですが、中には「点が無い」方で収録しているフォントもあります。

一方、中国語はというと「点が無い」方が正解で、これは、簡体字・繁体字とも同じです。

【参照資料】 文化庁 報道発表
常用漢字表の字体・字形に関する指針(報告)について (2016年2月29日) (PDF)


箸の数え方

日本語の量詞

箸を数える時の単位(量詞)は日本語では「膳」が使われます。
この「膳」は、食事用の箸を数える時に使います。
菜箸や火箸「組」「具」を使います。

箸は2本1組なので、「本」を使うと片一方(1本)を指すことになります。
また、割る前の割り箸も「本」を使うことができます。


中国語の量詞

中国語では"双" [shuāng]を用います。
また、手に持った時には"把" [bǎ]を使うことができます。(通常は1膳(2本)を指します。)

1本の箸を表現するときは、一般的に"支" [zhī]を使います。
これ以外に"枝" [zhī]または"根" [gēn]を使うことができます。


箸の形

中国の箸の歴史と日本との違い - 中国の箸の方が長い

明の時代の変革

中国で箸の形が大きく変わったといわれるのは、明の時代といわれています。

この変化が起こるまでは、形状はほとんど円柱で、中には六角形や四角形のあったものの極めて少なかったといわれています。
箸の材質は、銀・銅・竹・木・牙など多くの材質があったようですが、形状は一様に円柱形でした。


箸の新しい形 “首方足圆”

明の時代に"首方足圆" [shǒu fāng zú yuán]と呼ばれる、持ち手側は四角形で先端部分が円形という形に変わったのは、大きな変化でした。

この形には3つの大きな利点があるといわれています。

  1. 円柱形では転がりやすいが、持ち手側を四角形にすることで転がり落ちなくなり、客を招く宴席に適した
  2. 持ち手側を四角形にすることで手に力を入れやすくなり、細切りにした料理や、かき混ぜるとき、麺を食べるときにも適した
  3. 職人による表現の幅が広がった - 四角にすることで平面部分に装飾を施したりでき、各面に装飾を施したりできる上、何膳かの箸をならべたときに、連続した絵画表現も可能になった


箸の長さ

日本・韓国・中国の箸の長さ比較 - 依依宝宝iiboboのブログより
日本・韓国・中国の箸の長さ比較 - 依依宝宝iiboboのブログより

日本の箸は中国の箸より短い

日本の箸は、中国の箸に比べて若干短くなっています。これは日本に伝わってから、魚などを食べる日本の食文化に合わせて変わったといわれています。

中国の標準的な箸の長さは、24~27cmとされていて、基準は約25.3cmです。

日本では、女性用が19.5cm前後で、男性向けが22.5cm程度とされていますので、実際に持ってみると長さを感じます。

中には、四川で見つかった清の時代の赤い漆塗りの竹箸は28cmで、河南では31cmという長さの明の時代の箸が見つかっています。


長い箸には中国らしい理由が!

しかし、現代まで約25.3cmという長さが基準となっているには、いかにも中国らしい理由があります。

日本でも使われていた長さの単位「寸」と「分」があります。
昔話の「一寸法師」でも使われていますね。
明治時代には1寸は尺(曲尺)の10分の1と定義されて、実質1寸=3.03cmとなりました。

中国では、1寸=3.333…cmとされています。

中国の箸の基準となる長さは7寸6分

で、7.6×3.333=約25.3cmとなります。


中国の箸の長さの基準が7寸6分の理由

では、なぜ7寸6分なのでしょうか?

7寸6分は中国で伝わっている

人の"七情六欲" [qī qíng liù yù]

が由来です。

これは、人が一般の動物とは異なるものであることを意味しています。

七情: 喜、怒、忧、思、悲、恐、惊

[xǐ, nù, yōu, sī, bēi, kǒng, jīng]

喜び、怒り、憂い、思い、悲しみ、恐れ、驚き

六欲: 眼、耳、鼻、舌、身、意

[yǎn, ěr, bí, shé, shēn, yì]

目、耳、鼻、舌、体、心


孔子は、

飲食で満たされることは人間の本来の欲望ではあるものの、7寸6分の箸を使って食事をすることで、常に欲望の節制を自身に思い起こすように

孔子

と説いています。


毎日の食事に欠かせない「箸」であるがゆえ、いろいろと深い物語がありますね。


実は、箸の置き方も、日本は横向きですが、中国は縦向きなど、マナーについても小さな違いがいくつかあります。ちょっとしたことですが、文化の違いは面白いです。


今回もお読みくださり、ありがとうございました。

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