蔓延する「○○ハラ」のほとんどは間違い!
「ハラスメント」を略した「○○ハラ」
「セクハラ(セクシャルハラスメント)」から始まって、「パワハラ」「カスハラ」「モラハラ」と無限に増殖しています。
- セクハラ → 性的な言動による迷惑行為
- パワハラ → 上下関係などを利用した嫌がらせ
- カスハラ → 顧客等からの著しい迷惑行為
- モラハラ → 非道徳的な嫌がらせ
この中で、英語として正しく繋がるのは"sexual harassment"だけ。
それ以外はすべて間違いです!(あくまで英語表現の話です。セクハラも絶対にダメです!念のため!)
誰が言い出したのか、これらの「嫌がらせ」や「迷惑行為」を全部まとめて「○○ハラ」と呼んで、無責任に無知を広めています。
政府広報まで「パワハラ」「カスハラ」といった言葉を使って、正しい英語理解を阻害している始末です…
今回は、無責任に広げられるいろいろな「○○ハラ」にメスを入れ、正しい英語表現をご紹介します。
(無限に増殖するので、代表的なものにとどめています。ここに記載がなければ、記事の内容から考えてみることをお勧めします。もしAIを使うなら、この記事へのリンクとあわせてAIに聞いてみてください。)
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英語の”harassment”(ハラスメント)とは?
「嫌がらせ」や「迷惑行為」という意味をあいまいにして「ハラスメント」略して「ハラ」とされていますが、英語の本来の意味を見ていきましょう。
以下がOxford Advanced Learner's Dictionaryの定義で、筆者により和訳を追記しています。
harassment noun
英: /ˈhærəsmənt/, /həˈræsmənt/
米: /həˈræsmənt/, /ˈhærəsmənt/[uncountable] [不可算]
the act of annoying or worrying somebody by putting pressure on them or saying or doing unpleasant things to them
誰かに圧力をかけたり、不快なことを言ったりして、その人を悩ませたり心配させたりする行為。
- sexual/racial harassment 性的/人種的な迷惑行為
- workplace/street harassment (= that happens at work/in the street) 職場/路上で起こる迷惑行為
the act of making repeated attacks on an enemy
Oxford Advanced Learner's Dictionary
敵に対して繰り返し攻撃を加える行為
guerrilla harassment of the enemy
敵に対するゲリラ的な嫌がらせ(攪乱)行為
Oxford Advanced Learner's Dictionaryには、"sexual harassment"という熟語だけが掲載されています。(記事執筆時点)
sexual harassment noun
unacceptable physical contact, comments about sex, etc., usually happening at work, that a person finds annoying and offensive
Oxford Advanced Learner's Dictionary
職場で起こりがちな、身体的接触や性的なコメントなど、本人が迷惑で不快だと感じる受け入れがたい行為。
この辞書に記載がないから正しくない、というわけではないですが、明らかな誤用が見えてきます。
ここで注目したいのは、例文では"sexual/racial"といった形容詞や"workplace/street"といった場所があげられている点です。
ほとんどの「〇〇ハラ」は和製英語!
このような誤った理解で作られた和製英語は、英語学習者を混乱させる大罪です。
「カスハラ」もそんな和製英語です。
はじめに、この「カスハラ」を例にとってみましょう。
和製英語「カスハラ」が間違いの理由
これを英単語を使って書くと"customer harassment"となりますが、冷静に見てみてください。
この英語から、「顧客等からの著しい迷惑行為」という意味を読み取れるでしょうか?
このように単語を並べただけでは、「迷惑行為」の行為者と被害者が逆にもなり得ます。
つまり、顧客 → 店員 なのか、店員 → 顧客 なのかはわかりません。
実際の世界にはどちらもあり得ますが、この英単語の並びだけでは俗にいう「顧客 → 店員」とは読み取れません。
"harassment"という単語を使うなら
- harassment by customer (顧客 → 店員)
- harassment toward customer (店員 → 顧客)
と表記することで、初めて意味が通ります。
でも、実際には"harassment"よりも適切な単語が使われます。
"customer abuse"や"abusive customer behavior"といった「理不尽な扱い」という表現が「顧客 → 店員」にぴったりです。
代表的な「〇〇ハラ」と正しい英語表現 一覧
それでは、和製英語の「〇〇ハラ」の正しい英語表現を見てみましょう。
セクハラ (セクシャル・ハラスメント)
- 正しい英語表現: sexual harassment
- 英語圏での捉え方: 唯一、略さなければ、そのまま通じる本物の英語表現。
カスハラ (カスタマー・ハラスメント)
- 正しい英語表現: customer abuse / abusive customer behavior
- 英語圏での捉え方: 顧客による暴言や不当な要求。abuse(理不尽な扱い)が適切。
パワハラ (パワー・ハラスメント)
- 正しい英語表現: workplace bullying / workplace harassment
- 英語圏での捉え方: "power harassment"は通じない和製英語。職場のいじめ・嫌がらせ。
モラハラ (モラル・ハラスメント)
- 正しい英語表現: emotional abuse / psychological harassment
- 英語圏での捉え方: 倫理(moral)ではなく、精神的な「虐待・嫌がらせ」と言い換える。
マタハラ (マタニティ・ハラスメント)
- 正しい英語表現: pregnancy discrimination
- 英語圏での捉え方: 嫌がらせというより、妊婦に対する「不当な差別・扱い」と捉える。「妊娠の状態」を示すなら"pregnancy"が適切。("maternity"は「母性、産科、妊婦服」という名詞や「妊婦の(ための)」という形容詞)
アカハラ (アカデミック・ハラスメント)
- 正しい英語表現: academic bullying
- 英語圏での捉え方: 大学等の優位な立場を利用した「いじめ」。
アルハラ (アルコール・ハラスメント)
- 正しい英語表現: coercing someone to drink / peer pressure to drink
- 英語圏での捉え方: お酒の「強要」や、飲まざるを得ない「同調圧力」。
和製英語では一つ覚えのようにすべて「〇〇ハラ」で片付けてしまっていますが、実際には状況に応じて使い分ける表現があります。
「〇〇ハラ」にまとめてしまうと、言葉が本来持つ意味(いじめ、虐待、差別、強要、圧力)を丸ごと消し去ってしまっているのです。
“harassment”だけじゃない!「嫌がらせ」や「迷惑行為」の英語表現
先ほどの英語表現に加えて、"microaggression"と"gaslighting"を含めた計7つの知っておきたい表現をご紹介します。
bullying
- 英語の意味合い: 立場や力の強い者が弱い者に対して、執拗に繰り返し精神的・身体的な攻撃・虐待を加えること。
- 解説: 「パワハラ」(workplace bullying)や「アカハラ」(academic bullying)の「人格を否定するような暴言を毎日浴びせる」といった行為。大人の職場でも非常に一般的。
abuse
- 英語の意味合い: 与えられた権限や優位な立場を不当に乱用して、相手を傷つけ、支配するという、深刻で悪質な行為。
- 解説: 「モラハラ」(emotional abuse)の「無視・隔離」や、「カスハラ」(customer abuse)の「客の立場を利用して理不尽に怒鳴り散らす」など、相手を支配しようとする行為。
discrimination
- 英語の意味合い: 個人の能力や業績ではなく、性別、妊娠、人種、年齢などの「個人の属性」を理由に、不公平・不利益な扱いをすること。
- 解説: 「マタハラ」(pregnancy discrimination)のように、「妊娠・育休取得を理由にプロジェクトから外す」「出世させない」といった制度的・構造的な不利益。
coercion (forcing)
- 英語の意味合い: 本人の意思に反して、力や脅し、立場を利用して「特定の行動を無理やり実行させる」行為。
- 解説: 「アルハラ」(coercing someone to drink)のように、「一気飲みをさせる」「断れない状況を作って飲ませる」といった、行動の強制そのもの。
peer pressure
- 英語の意味合い: 特定の上位者から命令されるのではなく、「周りのみんながやっているから」「空気を読まなければいけない」という集団の無言の圧力。
- 解説: 日本の「付き合い残業」や、職場の飲み会で「とりあえずビールで乾杯」という空気に従わざるを得ない状態(アルハラの背景)の説明に最適。
microaggression
- 英語の意味合い: 悪気や攻撃意図はないものの、無知や偏見から、相手を傷つけたり不快にさせたりする日常的な言動。
- 解説: 職場で悪気なく「まだ結婚しないの?」「お子さんはまだ?」と聞く行為(「マタハラ」の一種)など、「悪気のない○○ハラ」に該当。
gaslighting
- 英語の意味合い: わざと誤った情報を与えたり、事実を否定したりして、相手に「自分が悪いのかな?」「自分の感覚がおかしいのかも」と錯覚させる巧妙な心理的虐待・洗脳行為。
- 解説: モラハラやパワハラの手口で「そんなこと言ってないだろ」「お前の受け取り方が繊細すぎるんだ」と相手を精神的に追い詰める行為。
"gaslighting"は、夫が妻を自分自身が狂っていると信じ込ませる場面が描かれた"Gaslighting"が由来。(1938年 イギリスの劇作家パトリック・ハミルトンによる作品が後に映画化)
いかがだったでしょうか。
筆者は、多くの方が学校や社会で苦労しながらも前向きに英語を勉強しているのに、無責任な和製英語の拡散で混乱させられてしまう現状をとても憂いています。
ちなみに、明治時代の日本では、当時の知識人や先人たちが知恵を絞って外来語を適切な日本語にして、国が普及させました。これが中国に伝えられて標準の中国語として使われている、という誇らしい歴史があります。
せめて政府などの公的機関は、先人を見習って責任をもって行動してほしいと思っています。
皆さまの英語学習が効率の良いものとなって、より国際人として活躍できることを願っています!






今回もお読みくださり、ありがとうございました。
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