中国語の名前のアルファベット表記
"Zhang QianHua"さんって…「ジャング クイアンヒューア」さんかな?
中国語圏の名前のアルファベット表記、英語の読み方の感覚で読んでいませんか?
日本人は、外国人に向けの名前の表記にローマ字を使いますね。
パスポートやクレジットカード、仕事上のメールなど、日常的にローマ字を使います。
中国語圏でも同様に、漢字の名前をアルファベット表記しますが、地域によって差があります。
ここでは
- 中国(普通話)
- 香港などの広東語圏
- 台湾
に焦点を当てて、アルファベット表記と違いを見ていきます。
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中国人の名前のアルファベット表記
中国のピンイン表記
中国での標準的な中国語は「普通話」と呼ばれています。
漢字の発音を表すのに、ピンイン(拼音)というアルファベット表記を使います。
通常のアルファベットに加えて、アクセント(声調)となる記号が追加されます。
(例: 王[wáng]、李 [lǐ]、张(張) [zhāng])
このアクセント(声調)は、発音が曖昧だと通じないほど重要な要素ですが、外国人に向けの名前の表記には、このアクセント記号(声調記号)をなくした形で表記されます。
(例: 王 = Wang、李 = Li、张(張) = Zhang)
名前が2文字以上の場合は、最初だけ大文字でそのまま続けて書くか、漢字ごとに大文字表記します。
※ 多くは下の名前が2文字で、2文字またはそれ以上の苗字は少ない。
例:
- 伟明(偉明) [wěi míng]: Weiming / WeiMing
- 志强(志強) [zhì qiáng]: Zhiqiang / ZhiQiang
- 美玲 [měi líng]: Meiling / MeiLing
- 丽华(麗華) [lì huá]: Lihua / LiHua
多くはそのまま英語読みをすれば、実際の中国語に「当たらずとも遠からず」くらいにはなるのですが、このピンイン(拼音)は、実際の中国語の発音を表すというよりは、中国語の発音を示す単なる記号です。
このため、実際の中国語と英語読みは違うのですが、最も大きな差があるのは"Q"です。
厳密には他にもいろいろ差がありますが、まずはここから押さえてみましょう。
Qの発音
Qは姓にも名にも使われますが、下の名前の方が多く見られます。
例を見てみましょう。
- 姓 Qiao: 乔(喬) [qiáo]など
- 姓 Qin: 秦 [qín]など
- 名 QiChen: 启辰 [qǐ chén]、祁晨 [qí chén]など
- 名 QianHua: 千华(千華) [qiān huá]、倩华(倩華) [qiàn huá]など
- 名 QiuYing: 秋莹(秋瑩) [qiū yíng]、秋英 [qiū yīng]など
- 名 QianYu: 倩雨 [qiàn yǔ]、茜雨 [qiàn yǔ]など
これらを英語読みすると、本来の中国語の発音から大きく外れます。
あえてカタカナ表記すると、"Qi"の英語読みは「クィ」でも、中国語の発音では「チィ」に近くなります。
Cの発音
その他、Cの発音も英語とは大きく異なります。
- 名 Can: 灿 [càn]
→ 英語読みは「キャン または カン」、中国語読みは「ツァン」に近い - 姓 Cai: 蔡 [cài]
→ 英語読みは「カイ」、中国語読みは「ツァイ」に近い - 名 Cen: 岑 [cén]
→ 英語読みは「セン」、中国語読みは「ツェン」に近い
SiとXiの発音
SiとXiも特徴的です。
"Si"の英語読みは「サイ」でも、中国語の発音では「スー」に近くなります。
- 姓 Si: 司 [sī]
- 名 Si: 思 [sī]
"Xi"の英語読みはその後に続く文字で変わるので、音の想像がつきづらいですが、中国語の発音では「シ」に近くなります。
- 姓 Xi: 席 [xí]
→ 英語だと「ザァイ」に近い感じ - 名 Xia: 夏 [xià]
→ 英語だと「ザイア」に近い感じ - 名 Xin: 欣 [xīn]
→ 英語だと「クシン」や「ザイン」に近い感じ
他にも
- 姓 Xu: 徐 [xú]
→ 英語にはない綴りで悩む
という例もあります。
ここに気をつけるだけでも、中国人からすると「わかってくれているね」となると思います。
中国のパスポートでの表記ルール
ちなみに、中国のパスポート(护照 [hù zhào])では、姓→名の順ですべて大文字表記です。
姓と名の間だけ空白を入れて、名前はそのまま続けて書きます。
例:
- 李强: Li Qiang → LI QIANG
- 王小明: Wang XiaoMing → WANG XIAOMING
香港人の名前のアルファベット表記
香港などの広東語圏では、アルファベット表記が異なる場合があります。
広東語は、中国の普通話とは外国語ほどの差があります。
声調だけを考えても、普通話の声調は4つでこれに「軽声」が加わる体系です。
これに対して、広東語の声調は6つの発音が基本で、それに詰まる音が3つ加わります。
この基本の6つは3種類の一定の音の高さと、3種類の抑揚のある音に分類できます。
これを"九声六调" といい、中国語の発音記号であるピンインとは異なり、発音を表すアルファベットに1~6の番号を追加します。(名前などの英語表記では、数字は省略されます。)
その上、広東語ならではの発音記号があって、そのアルファベット表記にも違いがあります。
このため、名前のアルファベット表記も異なってきます。
ここでは、特徴的ないくつかの姓を見てみましょう。
陳
- 普通話: 陈(陳) [chén]
- 広東語: 陳 [chan4]
- 香港などでのアルファベット表記: Chan
香港の映画人「ジャッキー・チェン(成龍)」の本名は「陳港生」で、アルファベット表記では"Chan"ですが、日本では「チェン」と表されています。
林
- 普通話: 林 [lín]
- 広東語: 林 [lam4]
- 香港などでのアルファベット表記: Lam
王
- 普通話: 王 [wáng]
- 広東語: 王 [wong4]
- 香港などでのアルファベット表記: Wong
李
- 普通話: 李 [lǐ]
- 広東語: 李 [lei5]
- 香港などでのアルファベット表記: Lee
広東語そのままでは"Lei"になりますが、姓の表記では"Lee"が一般的です。
ブルース・リー(李小龍)で有名です。
劉
- 普通話: 刘(劉) [liú]
- 広東語: 劉 [lau4]
- 香港などでのアルファベット表記: Lau
呉 / 吳
- 普通話: 呉 / 吳 [wú]
- 広東語: 呉 / 吳 [ng4]
- 香港などでのアルファベット表記: Ng (稀にEng)
"N"ではじまるのは世界的に見ても珍しいといえます。
黄 / 黃
- 普通話: 黄 / 黃 [huáng]
- 広東語: 黄 / 黃 [wong4]
- 香港などでのアルファベット表記: Wong
香港では、王(Wong)と同じ発音になります。
台湾人の名前のアルファベット表記
台湾では、長年ウェード式(Wade–Giles)というローマ字表記が使われていました。
現在では、ウェード式表記は学校で習うこともないですが、地名や名前では現在もその影響が色濃く残っています。
普通話のピンイン(拼音)表記のアルファベットと比較すると、主にこのような違いがあります。
- zh → ch
- q → ch’
- x → hs
発音には大きな違いがありませんが、普通話でのzh, ch, sh, rといった「そり舌音」が曖昧になる傾向があります。
| 漢字 | 中国 (ピンイン) | 台湾 (ウェード式) | 発音の差 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 張 | Zhang | Chang | ほぼ同じ | zh → chと表記されるだけ |
| 鄭 | Zheng | Cheng | 同じ | zh → ch |
| 謝 | Xie | Hsia / Hsieh | 同じ | x → hs |
| 邱 | Qiu | Chiu | 同じ | q → ch’ |
| 徐 | Xu | Hsu | 同じ | x → hs |
| 石 | Shi | Shih | ほぼ同じ | shi → shihと表記されるだけ |
このように、アルファベット表記だけ見るとちょっと混乱してしまいそうですが、特徴があるのはおもしろいと思います。
名前によっては、アルファベット表記だけでおおよその出身地が分かることもありますね。
さらに、日本人だからこそ、アルファベット表記を見て漢字を想像して、漢字によるコミュニケーションを取り入れられるのは、大きな強みだと思います。






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